金正恩氏のせいで性感染症の拡大が止まらない北朝鮮

金正恩氏

 毎年12月1日は「世界エイズデー」だ。これに合わせて東京では23日から26日まで、第31回日本エイズ学会学術集会・総会(外部リンク)や関連イベント「TOKYO AIDS WEEK」(外部サイト)が開催された。依然として存在するHIV陽性者への偏見、差別を解消し、感染拡大の抑止を図るのがこの行事の目的だ。

 一方、世界エイズデーに際した行事は北朝鮮でも行われている。

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、昨年12月1日に平壌の人民文化宮殿で世界エイズデーの関連行事が開催され、保健部門の関係者、世界保健機関(WHO)、国連開発計画(UNDP)の関係者が参加し、レポート発表と討論が行われたと報じた。また、この日に合わせて中央と各道の衛生宣伝機関は、エイズ予防の宣伝活動を行った。

 北朝鮮当局は、このような活動を行っている一方で、HIVなどの性感染症の防止に欠かせないコンドームをご禁制の品にしているとされる。

 中国と平壌を行き来しているある華僑商人が、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に語ったところによると、コンドームを北朝鮮に持ち込もうとすると「風紀びん乱物品」と見なされ税関で止められてしまうという。また、持ち込みに成功しても、販売が摘発されれば重い処罰を受ける。

 平壌に滞在中の中国人ビジネスマンによると、北朝鮮では売春が大々的に行われており、コンドームが不可欠となっている。RFAによれば、北朝鮮の某幹部も「避妊と性感染症予防のためには、国が率先してコンドームを生産し、人民に配給する必要がある」とその必要性を認めている。

 (参考記事:北朝鮮で「性感染症」がまん延…「性教育不在」「男女共学」で爆発的拡大

 実際、手軽に使える避妊器具であるコンドームは、北朝鮮でもとても人気が高く、中国に出張した北朝鮮幹部はコンドームを大量に買い込むほどだという。

 しかし、北朝鮮当局は「わが国に売春など存在しない」との建前を振りかざし、コンドームの輸入・製造・販売を認めようとせず、一般への普及を阻んでいる。

 北朝鮮当局がコンドームを「好ましからざる物」扱いする背景には、金正恩党委員長が提唱する少子化対策と、性感染症についての立ち遅れた認識などがある。

 (参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

 金正恩氏は低下する一方の出生率向上のために、「避妊と妊娠中絶を禁止せよ」という指示を下したと伝えられている。違反者はなんと懲役3年の刑に処されるという。むちゃくちゃな話ではあるが、北朝鮮において金正恩氏の指示は絶対の掟だ。コンドーム生産を提案したら政治犯扱いされ、クビが飛びかねないため、怖くて誰も進言できないのだ。

 さらに、北朝鮮の国営メディアは、米国や韓国での性感染症の流行を「社会が腐敗している」とけなすばかりで、正しい知識を自国民に知らせる努力をほとんど行っていない。その上、生活苦から逃れるため売春を行い、性感染症を患ってしまった女性を処罰しているとの話もある。これでは、怖くて誰も検査を受けようとしないだろう。

 さらには、女性に「性上納行為」を強いる社会風土が根絶されない限りは、女性の地位向上も、性感染症の拡大抑制も期待できないだろう。

 (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為