羽生氏、「永世七冠」に奇策使っていた 立会人・青野九段が激白「誰もやったことのないような仕掛け方を大一番に」

羽生新竜王(左)と渡辺前竜王(右)の対局で立会人を務めた青野九段(中央)=5日、鹿児島県指宿市

 将棋の羽生善治棋聖(47)が前人未到の大記録を成し遂げた。第30期竜王戦七番勝負で、渡辺明竜王(33)からタイトルを奪取し、史上初の「永世七冠」を達成したのだ。歴史的大一番で立会人を務め、夕刊フジで「勝負師たちの系譜」を連載(毎週金曜)する青野照市九段(64)が、40代後半でも進化を続ける羽生新竜王の凄さを激白した。

 「羽生新竜王の今回の将棋は、前例の全くない仕掛け方だった」

 青野九段が驚いたのは1日目に羽生新竜王が指した37手目。渡辺前竜王の5四銀に対し、羽生新竜王が4五銀とぶつけた場面だ。これまでは良くないといわれていた手だったという。

 「誰もやったことのないような仕掛け方を大一番にぶつけた。永世七冠を獲ろうが獲るまいが、将棋にどんな可能性があるのかを自分なりに知りたいと思っていたのではないか。いくつになっても、そういう精神があると感じた」

 もう一つ、青野九段が気づいた変化は、渡辺前竜王との対局の雰囲気だった。14歳下の渡辺前竜王の挑戦を受けた2003年の王座戦第5局で、羽生新竜王は指を大きく震わせて駒をうまく持てなくなった。

 当時を振り返った青野九段は「この年代にタイトルを渡したくないという凄いプレッシャーがあるように感じられた。ところが、今回は同志と将棋を指しているような印象を受けた。今年、20代の棋士にタイトルを奪われており、その世代が羽生新竜王にとって異次元の世界になったのではないか」と語る。

 羽生新竜王は6日朝、「これは夢なんじゃないかと思ったが、(新聞)記事をみて本当だ、よかったと思った」と語った。理恵夫人(47)も5日、ツイッターに「新聞社の皆様、出来ましたら… 号外を、号外を頂けないでしょうか…」と投稿した。2人の興奮は、今回の歴史的偉業の重さを物語っている。

 タイトル戦の数が異なるため一概に比較できないが、羽生新竜王の永世七冠に続くのは、五つの永世称号を獲得した故大山康晴十五世名人と中原誠十六世名人(70)の2人で、渡辺前竜王が永世二冠で追う。

 今後、永世七冠を達成する棋士は現れるのか。青野九段は「今の第一線で活躍する現役棋士はいないだろう。藤井聡太四段をトップとした次の世代の中で今後、何十年の間にいるかどうかだ」とみる。

 今回の竜王位獲得で、羽生新竜王の通算タイトル獲得記録は99期となり、100期の大台まであと1期に迫る。さらに、通算勝数は1391で、大山十五世名人の持つ1433の更新にも期待がかかる。

 青野九段は「次はいつまで現役としてトップを続けられるかだ。超人としてトップを極めた羽生新竜王が、鉄人として大山十五世名人を抜けるかどうかが見どころとなるだろう」と期待を寄せた。