【最新国防ファイル】北は「核戦争勃発の前奏曲」と挑発 米韓合同演習『ビジラント・エース』は来たるべき有事の“展開訓練”

米軍の最新鋭ステルス戦闘機F22「ラプター」

 韓国全土で4日から8日まで、米韓合同演習「ビジラント・エース」が行われている。空軍中心の年次演習であり、両軍合わせて航空機230機、1万2000人の将兵が参加する過去最大規模のものとなった。

 米軍は、F22「ラプター」や、F35「ライトニングII」といった最新鋭ステルス戦闘機のほか、B1B戦略爆撃機「ランサー」や、E3早期警戒管制機などが参加した。

 戦闘機同士が戦う空対空戦闘から、地上施設を精密攻撃する空爆訓練などが行われていく。この陣容や、演習内容などから、これが対北朝鮮を想定した訓練であるのは明らかである。

 韓国空軍は、対地攻撃能力の向上に力を入れている。期待されるのが、F15K戦闘機に搭載できる射程500キロの空対地ミサイル「タウルス」だ。今年9月に初めて射撃訓練を実施した。発射された「タウルス」は障害物を避けながら飛行し、約400キロ離れた模擬建屋へと命中させることに成功している。今回の演習でも、「タウルス」の射撃訓練は行われるものと思われる。

 韓国としては、戦火が国土に広がる前に、迅速に北朝鮮の軍事施設を破壊できるかに国家の命運がかかっている。ここに時間がかかれば、北朝鮮と隣接するため、人的・経済的損失は甚大なものとなってしまう。こうした「演習を行うこと」は非常に重要だ。

 一方、米軍にとっては「演習を行うこと」だけが目的ではなく、「演習に向けて展開する」ことにも狙いがある。

 11月27日から今月2日まで、オーストラリアで米豪合同演習「ライトニング・フォーカス」が行われていた。この演習には、グアムに暫定配備されている2機のB1B爆撃機が参加した。そこで、オーストラリア空軍のEA18G電子戦機「グラウラー」が、敵の防空体制を妨害し、その間隙をぬってB1Bが爆撃する訓練など、実践的な内容で訓練を行った。これが終了すると、すぐに韓国へと向かった。

 米本土から飛来したF22やF35Aは一旦、嘉手納基地(沖縄県)を経由して韓国に展開した。岩国基地(山口県)に配備されている米海兵隊のF35Bは、ダイレクトに韓国へ向かっている。

 この状況を俯瞰(ふかん)すると、米軍は朝鮮有事の際、日本やオーストラリアを前進拠点とするのは間違いない。「ビジラント・エース」は、来たるべき有事のための展開訓練も兼ねている。

 心中穏やかでないのが北朝鮮だ。

 早速演習を非難し、「核戦争勃発の前奏曲」と挑発している。潜水艦発射型弾道ミサイルSLBMの発射試験が間もなく、それも早ければ今年中とも言われている。事態は深刻さを増すばかりだ。

 ■菊池雅之(きくち・まさゆき) フォトジャーナリスト。1975年、東京都生まれ。陸海空自衛隊だけでなく、各国の軍事情勢を取材する。著書に『こんなにスゴイ! 自衛隊の新世代兵器』(竹書房)、『ビジュアルで分かる 自衛隊用語辞典』(双葉社)など。