【日本を守る】トランプ氏アジア歴訪の「勝者」と「敗者」 威厳繕った韓国、存在一回り大きくなった安倍首相

安倍首相(右端)は、各国首脳がそろったAPECで存在感を発揮した(AP)

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 ドナルド・トランプ米大統領の「アジア歴訪の旅」で、いまのところの勝者は、安倍晋三首相だ。

 中国の習近平国家主席が自己採点したとすれば、「自分が勝者だった」と満足したはずだ。習氏は中国の最高指導者として初めて、米国大統領を歴代皇帝の宮殿である「故宮(紫禁城)」で歓待し、得意げに案内した。

 故宮には9000もの部屋がある。習氏は「自分が米国と対等な中国の全能の皇帝になった」ことを、印象付けたかったに違いない。

 ところが、商人だったトランプ氏は、取引相手をおだてるのにたけている。習氏に甘言を並べて褒め殺した。

 すると、習氏は赤ん坊があやされたように、満面笑顔になって舞い上がった。普段は尊大に構えているのに、小者であることが露呈した。毛沢東が、1972年に訪中したニクソン米大統領と会談したときに、目上のように振る舞ったのと対照的だった。

 習氏は、トランプ氏が北朝鮮の「核・ミサイル開発」を放棄させるために「最大限の圧力」をかけることに賛成しつつも、「対話によるべきだ」と繰り返した。北朝鮮へ石油供給を全面的に止めることにも反対した。

 中国は、北朝鮮を絞め殺したくない。米国は北朝鮮の脅威がある限り、中国の協力を求めねばならない。北朝鮮の脅威がなくなったら、米国の圧力が中国に向かってこよう。

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、終始、独立国の大統領として威厳を繕ったが、敗者となった。日米韓が、北朝鮮に「最大限の圧力」を加えることには合意したものの、対話を説いて軍事攻撃を加えることに反対し、足並みを乱した。

 韓国では「トイレに入る前と後では、気分が変わる」という。

 文氏は、ベトナム・ダナンのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)と、フィリピン・マニラのASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議では、中国に擦り寄って外交を行った。韓国民は大昔から「事大主義」といって、強者に媚びる国民性がある。

 私と親しいペンタゴン(国防総省)幹部は「われわれはムン・ジェインの斬首作戦を行いたい」と冗談を言って、笑った。

 トランプ氏は、ダナンとマニラで「自由で開かれたインド太平洋」を主唱した。安倍首相が5年前から提言してきた、「自由と繁栄の弧」を借りたものだった。

 トランプ氏の「アジア歴訪」によって、誰もが国際政治家としての安倍首相の存在が一回り大きくなったことを、認めざるを得まい。

 ■加瀬英明(かせ・ひであき) 外交評論家。1936年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、エール大学、コロンビア大学に留学。「ブリタニカ百科事典」初代編集長。福田赳夫内閣、中曽根康弘内閣の首相特別顧問を務める。松下政経塾相談役など歴任。著書・共著に『小池百合子氏は流行神だったのか』(勉誠選書)、『「美し国」日本の底力』(ビジネス社)など多数。