【昭和のことば】奇跡的な戦後経済発展ウラに…世相つかんだ「三等重役」(昭和26年)

 このことばは、『サンデー毎日』に連載された源氏鶏太の小説『三等重役』に由来する流行語である。

 作者の源氏は「三等」と名付けたゆえんを、「一代で会社を築いた立志伝的社長が一等、名門に生まれた二代目が二等、戦前の大物重役に変わって浮上してきたサラリーマン社長が三等」と語った(参考『昭和ことば60年史』講談社)。小説は大好評。その三等社長を河村黎吉が演じ、森繁久彌、小林桂樹らを配した東宝映画もヒットして、このことばが世相をつかんだ。

 この年の主な事件は、「NHK、第1回紅白歌合戦スタジオ放送」「三原山大爆発」「アメリカ政府、マッカーサーを罷免。離日。その後、アメリカ議会で『老兵は死なず、ただ消え去るのみ』と演説」「横浜桜木町駅で国電2両が焼失し、ドアが開かず106人死亡(桜木町事件)」「全国を9分割した電力会社発足」「島で敗戦を知らずに過ごした女性が生還。アナタハンの女王と騒がれる」「サンフランシスコ対日講和条約調印」「黒澤明監督の『羅生門』、ベネチア国際映画祭でグランプリ獲得」など。

 この年の映画は『カルメン故郷に帰る』(日本初の総天然色)『自由学校』。本は安部公房『壁』、堀田善衛『広場の孤独』。この頃、日本初のLPレコード、ベートーベン『第九交響曲』が発売された。

 「三等」は、ある意味、敗戦という苦悩を味わった日本人にとって、ピッタリのことばだった。このことばに元気づけられたり、またからかわれたりしながら、奇跡的な戦後経済発展の下地をつくっていった。=敬称略(中丸謙一朗)

 〈昭和26(1951)年の流行歌〉 「越後獅子の唄」(美空ひばり)「上海帰りのリル」(津村謙)「雪山讃歌」(アメリカ民謡の替え歌)