【新・悪韓論】訪中で文大統領の狙い空振り “属地の酋長”に対する冷遇も支持者は「外交の天才」と快哉

 「どう考えてもおかしすぎる文大統領の国賓訪中」と題する社説を、韓国の保守系紙「朝鮮日報」(2017年12月16日)が書いている。

 ホスト国・中国の無礼に対する恨み節なのだが、こう考えれば「おかしすぎる」ことはなくなるカギがある。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は「大統領の南京サプライズ訪問による『韓中抗日戦線の構築』」を画策していたが、詰めの段階で中国に拒否された-という推測だ。

 なぜ、文大統領は、中国要人が挙げて南京に行く「南京事件80周年」の日を選んで北京入りしたのか。中央日報(同12月14日)は、その日をわざわざ選んだのは韓国側だったと伝えている。

 思い出すのは、ドナルド・トランプ米大統領が訪韓のため、平沢(ピョンテク)米軍基地に到着したときのことだ。そこに予告なく文氏が歓迎のため現れた。トランプ氏としては「身内だけで軍事のことを話そう」と思っていたのに、いい迷惑だったろう。

 だが、韓国側にすれば、これぞ「サプライズ歓迎」だ。「わが支持率」だけしか頭は回らない。相手のことをおもんばかる気配りなど、サラサラない。訪中も同じ脈絡で捉えたくなる。

 この際、日程を伏せておいて南京を「サプライズ訪問」することで、中国との間に「抗日戦線」を組み、それが盛り上がれば米軍の最新鋭迎撃システム「THAAD(高高度防衛ミサイル)」の話を霧散できる、と。

 中国は、南京式典で習近平国家主席が式辞を述べないなど「対日配慮」をした。だが、韓国の歴代政権-いや韓国人はと言うべきか、「これがうまい手」と思い込んだら、相手への気配りなど働かない。

 中国に「南京サプライズ訪問」は拒絶された。が、韓国民への手前、出発の日を1日遅らすわけにもいかない。

 仕方なく、13日に北京入りした。そして格好を付けるために、在中韓国人をかき集めて懇談会を催した。急な日程だから、大人数は集まらなかったのだろう。韓国紙には参加人数も、主だった参加者も載っていない。

 その後、日程に沿って「韓中ビジネスフォーラム」を催したが、公式発表で参加者は500人。韓国から300人の経済人を同行させている。配下にいる北京支店の責任者らも参加しただろう。となると、中国人の参加者はどれほどいたのか。

 翌日、ようやく首脳会談、続いて国賓晩餐(ばんさん)会があった。ところが、晩餐会の全体写真は公開されていない。両首脳の発言も発表されていない。どんなご馳走が出たかも。本当に「歓迎晩餐会」は催されたのだろうか、まさかね…。

 3泊4日の訪中の間に10回の食事があったそうだが、うち中国要人との会食は“幻の国賓晩餐会”を含めた2回だけ。

 最初の日程の齟齬があったとしても、閣僚級の出迎えもなく、同行記者団は殴られるは、まさに“属地の酋長”に対する礼遇、いや冷遇だった。

 それなのに韓国の文支持派は、習氏の口から「THAAD」という固有名詞が出なかった点を捉えて「外交の天才・文在寅」と快哉(かいさい)している。

 滅びゆく国の哀れさを、ここに感じざるを得ないではないか。

 ■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。