《zak女の雄叫び お題は「白」》神聖な祈りの場所で…お家騒動の果てに起きた富岡八幡宮の悲劇

宮司が殺害されるという悲劇の舞台となってしまった富岡八幡宮

 古式ゆかしい真っ白な装束に、ゆったりと厳かな立ち居振る舞い-。由緒ある神社の「顔」であり、最高位である宮司の座をめぐり、今月7日、元宮司の男が宮司の姉を日本刀で刺殺する凄惨な事件があった。事件後に自殺した男が残した“遺書”とみられる手紙には、「たたり」「怨霊」といった不吉な文字が並んでいた。記者も手紙を入手して読んだが、それはまるで、小説や映画に出てくるようなおどろおどろしい怪文書そのものだった。

 事件をめぐっては、神社の神聖なイメージからはかけ離れた、元宮司の裏の顔が次々と明るみに出た。借金に女遊び、脅迫事件…。30年以上にわたる親族間の泥沼の争いを見てきたという神社関係者の男性は「正直、いつ事件が起きてもおかしくないと思っていた」と打ち明けるが、何も知らずに参拝していた人たちのショックは大きい。「新年をすがすがしい気持ちで迎えられない。初詣は別の神社に行く」。そう言い切る住民もいるくらいだ。

 事件そのものの猟奇性とは別のところで記者が驚いたのは、神社の莫大な収入だ。20万~30万人が訪れるという初詣の賽銭や、お守りの販売、祈祷料などの宗教行為に関する収入は、いずれも非課税。使途について具体的な取り決めはなく、宮司の発言力が大きいというから、財産管理をめぐって争いが起きたというのもうなずける話だ。ちなみに、自殺した元宮司は宮司を退任する際、神社から退職金として1億2000万円もの支払いを受け、さらに、毎月数十万円の支援金を受け取っていたという。

 もちろん、参拝客が詣でる対象は宮司ではなく、そこに祭られている神様だ。ただ、理屈ではそうだとしても、「たたり続ける」などといわれた神社に参拝する気になれないという人がいるのも分かる。また、神社の莫大な財産が争いの種というのも、賽銭を投げる身としては気持ちのいいものではない。幼いころから神社に親しみ、支えてきた地元住民や氏子にとっては、宮司の個人的な問題に翻弄されるのは理不尽で悲しいことだが、事件でマイナスイメージがついてしまったことは事実だろう。

 富岡八幡宮は現在の大相撲の前進となる「江戸勧進相撲」の発祥の神社として知られ、現在も新横綱誕生の際には、境内で奉納土俵入りなどの式典が行われることでも有名だ。近年の相撲ブームで、観光スポットとしても改めて脚光を浴びていた最中に起きたこの事件。暴力騒動に揺れる角界同様、イメージの払拭には時間がかかりそうだ。(い)

 【zak女の雄叫び】取材や日常…。女性記者21人が月ごとのキーワードで本音を綴るリレーコラムです。12月のお題は「白」です。