【最新国防ファイル】北ミサイルから国民守る最後の砦 PAC-3機動展開訓練、屈強な隊員あってのハイテク技術

海自佐世保基地に到着し、キャニスターを立ち上げたPAC-3

 昨年12月22日早朝-。芦屋基地(福岡県)を出発した航空自衛隊第2高射特科群第5高射隊は、海上自衛隊佐世保基地倉島岸壁(長崎県)へと到着した。朝陽が昇る前の真っ暗なゲート前を11台もの車列が次々と通過していく。

 そして、基地内のメーンストリート上に停車した。中心にいたのが、空自の地対空誘導弾パトリオット(PAC-3)だった。今回の訓練は「北朝鮮による弾道ミサイルの発射が相次いでいることを踏まえ、ミサイル対処に係る戦術技量の向上を図る」のが目的だ。

 2017年の防衛省・自衛隊は、まさに北朝鮮の弾道ミサイルに振り回された。そこで、日本中にPAC-3を機動展開させる訓練を実施した。

 PAC-3は、弾道ミサイルから国民の生命と財産を守る最後の砦だ。海上自衛隊のイージス艦から発射される宇宙空間まで届く迎撃ミサイルSM-3とは異なり、大気圏に再突入して地表に落ちてくるギリギリのところで迎撃するPAC-3の射程は短い。前もって予想される落下エリア内へと機動展開して迎撃態勢を取る必要がある。

 特に、佐世保には米海軍基地がある。北朝鮮は、在日米軍基地を標的とすると公言しており、このような訓練は必要不可欠だ。

 ようやく、朝の光がアスファルトをオレンジ色へと染め、斜光差す中、27人の高射隊員は慣れた手つきで準備を始める。ミサイルは発射基があれば撃てるものではない。射撃管制装置、レーダー装置、アンテナ・マスト・グループ、電源車なども一緒に展開する必要がある。万全を期すため、2基展開した。

 両基ともキャニスターを立ち上げ、いつでも撃てるようにと空へと向けられた。PAC-3は従来のパトリオットミサイルに比べ、小型化しているのだ。1本のキャニスター内に4発装填(そうてん)されている。

 日本政府は、弾道ミサイル防衛強化として、地上配備型の弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入を決めた。こちらはイージス艦やPAC-3のように、機動展開することなく、同じ場所から常時監視することが可能だ。日本列島内2カ所に設置すれば、丸ごとカバーできる。秋田県と山口県が候補に挙がっている。

 空自の早期警戒機などとリンクし、最新ミサイルであるSM-6とともに用いれば、水平線以遠の巡航ミサイルや敵艦艇にも対処も可能だ。こうした防空体制を統合防空ミサイル防衛(IAMD)と呼ぶ。

 北朝鮮が、次にいつ弾道ミサイルを発射するかは誰も分からない。また、中国海軍がいつ南西諸島部へと侵攻してくるかは分からない。備えは完璧にしておく必要がある。

 ただし、ハイテクな最新装備だけをそろえていっても意味はない。吐く息も白い寒空の下で、こうして実直に訓練を重ねている隊員たちがいなければ役に立たないことも忘れないでおきたい。

 ■菊池雅之(きくち・まさゆき) フォトジャーナリスト。1975年、東京都生まれ。陸海空自衛隊だけでなく、各国の軍事情勢を取材する。著書に『こんなにスゴイ! 自衛隊の新世代兵器』(竹書房)、『ビジュアルで分かる 自衛隊用語辞典』(双葉社)など。