平昌五輪期間厳戒、安倍首相とトランプ大統領は開会式欠席 半島周辺に世界最強の原子力空母「カール・ビンソン」派遣へ

米軍が朝鮮半島周辺に派遣した原子力空母「カール・ビンソン」(米海軍提供)

 韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪の開会式に、安倍晋三首相と、ドナルド・トランプ米大統領が欠席することが分かった。背景には「従北・反日」姿勢を露骨にし、慰安婦問題の日韓合意を反故にしようとする文在寅(ムン・ジェイン)政権への根強い不信感があるとみられる。トランプ政権の年明け以降の宥和的発信も、朝鮮半島有事を見据えた「情報操作(Information Control)」と分析する声もある。現に、米軍は五輪期間中、世界最強の原子力空母「カール・ビンソン」を中心とする打撃群を朝鮮半島周辺に派遣する。  

 「南北間の対話が行われている間は、いかなる軍事的行動もない」「適切な時期と状況で北朝鮮が望むなら、対話の窓は開かれている」

 韓国大統領府によると、トランプ氏は10日夜、文氏との電話首脳会談で、前日行われた南北閣僚級会談の内容について説明を受けた後、こう語ったという。

 両首脳は、南北対話が北朝鮮の五輪参加にとどまらず、「核・ミサイル開発」の完全放棄に向けた米朝間の対話につながる可能性があるとの認識で一致した。対北制裁や確固とした立場を堅持しながら、対話の状況について緊密に協議することも決めた。

 トランプ氏は昨年1月の大統領就任以来、「北朝鮮は核で世界を威嚇するだけでなく、他国で暗殺を含む国際テロを繰り返し支援してきた」「犯罪国家を孤立させる」「われわれには、平壌(ピョンヤン)の脅威に対抗する『強固な軍事オプション』がある」などと強硬姿勢を貫いてきた。

 ところが、北朝鮮が昨年11月末、米全土を射程に入れたICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星15」を発射したあたりから、レックス・ティラーソン国務長官が「前提条件なしで対話を始める用意がある」と発言するなど、政権の雰囲気が変わったようにみえる。

 今回の米韓首脳会談での、トランプ氏の発言をどうみるべきか。

 日米情報当局関係者は「平昌五輪(2月9日開幕)の安全確保のためだろう」といい、続けた。

 「同五輪には、2900人以上の選手が参加予定だ。各国首脳や関係者、応援団も合わせれば『平和の祭典』に数十万人の外国人が韓国を訪れる。彼らが“北朝鮮の人質”にならないよう、緊張緩和のポーズをしたのではないか。そもそも、トランプ政権は、『従北・親中』姿勢をとる文政権を信用していない。本当に重要な情報は伝えていないはずだ。その証拠に、トランプ氏は平昌五輪開会式への出席を見送った」

 ホワイトハウスは10日、マイク・ペンス副大統領夫妻が米代表団のトップを務め、平昌五輪開会式に出席すると発表した。

 安倍首相も同日、五輪開会式への出席を見送る方針を固めた。表向きは通常国会(22日召集予定)の日程のためだが、文政権が「最終的かつ不可逆的な解決」とした日韓合意を破るような対応をしたため判断した。

 オバマ前米大統領は就任中、2016年のリオ五輪や、14年のソチ冬季五輪、12年のロンドン五輪の開会式に出席しなかったが、ジョージ・ブッシュ元大統領は08年の北京五輪開会式に出席している。

 北朝鮮の脅威を前に「日米韓の連携」が重視されるなか、韓国が威信をかけた冬季五輪に日米首脳が欠席することになる。大国の首脳で、出席意思を明確にしているのは、エマニュエル・マクロン仏大統領ぐらいだ。

 トランプ氏は10日、「向こう数週間~数カ月は(朝鮮半島で)何が起きるか様子を見る」とホワイトハウスで記者団に語ったが、警戒は怠っていない。世界最強の原子力空母「カール・ビンソン」を平昌五輪の開幕前に朝鮮半島近海に到着させるという。

 カール・ビンソンは全長333メートルで、乗艦する士官と兵員は約3000人、戦闘機をはじめとする艦載機は約90機を誇る。空母打撃群には駆逐艦や潜水艦、補給艦などが随伴し、その戦闘力は欧州の中規模国家の軍事力にも匹敵するとされている。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(日本語版)は10日の社説で、カール・ビンソンの派遣について、「戦争を脅しに使いながら平和を望むふりをする若き独裁者(正恩氏)の言動よりも、このような空母配備の方がよっぽど信頼できる平和保証だ」と指摘した。

 前出の日米情報当局関係者も「トランプ政権は、北朝鮮が米本土に到達可能な『核ミサイル』を完成させることは許さないはずだ。厳冬の中で対北制裁を強めて、五輪後に動くのではないか。最近の宥和的発信は、軍事的行動も覚悟したうえでの『情報操作(Information Control)』だろう。歴史上、軍事行動の前には見られた。北朝鮮を油断させて、国際世論を自国に有利に誘導する目的だ」と語る。

 現に、五輪開会式に出席するペンス氏の補佐官は《朝鮮半島で米国の強い存在感をさらに高め、北朝鮮の体制に米国の決意を明確に伝えることになる》との声明を発表している。

 軍事ジャーナリストの井上和彦氏は「五輪という平和的なイベントの最中に、北朝鮮との軍事衝突を避けると考えるのは当然だ。有事のリスクは一時的に下がっているが、北朝鮮が『核・ミサイル開発』を続けるなか、米国も軍事的圧力をかけることをやめたわけではない。今は北朝鮮の腹を探り、動向を注視しているのだろう」と分析した。

 日米両首脳が五輪開会式を欠席することについては、「想定内だ。日韓は慰安婦問題をめぐってギクシャクし、日米韓の首脳が五輪で握手できるような雰囲気ではない。『従北・反日・反米』の文政権の政治姿勢が原因で、『身から出たサビ』といえる」と話している。