北の思惑通りに動く韓国 平昌五輪ならぬ“平壌五輪”に

提供:NEWSポストセブン 
美女軍団が再び登場するか

 韓国・文在寅政権の迷走が平昌五輪まで歪め始めた。慰安婦日韓合意を覆す新たな要求を突き付けたかと思えば、対北朝鮮協議では差し出された“撒き餌”になりふり構わず飛びついている。2月9日の開幕を前に、この五輪は、一体どこに向かっているのか。

 「国会日程を見ながら検討したい」--平昌五輪開会式の出席について、安倍晋三首相は15日、欠席の可能性をにじませた。

 無理もないことだろう。韓国政府が慰安婦問題をめぐる2015年合意を覆してきたことで日韓関係に再び暗雲が立ちこめ、“祝賀ムード”は吹き飛びつつある。

 ◆北の言いなりじゃないか!

 奇しくも、平昌五輪には各国首脳の「欠席」の表明も相次いでいる。

 ドーピング疑惑で選手団が参加できないロシアのプーチン大統領の出席は期待できず、米国もトランプ大統領ではなくペンス副大統領が出席する方針だ。さらに16日、「中国からは韓正・政治局常務委員が訪韓する方向で調整中」と公表され、習近平・国家主席の“欠席”が決まった。

 北朝鮮の核問題を巡る6か国協議のメンバー国の首脳の欠席表明が続いているのだ。さらに安倍首相まで欠席を検討する背景にあるとみられるのが、慰安婦日韓合意を巡る問題、そしてそれと表裏一体の関係にある“北との接近”である。

 韓国の康京和外相が慰安婦問題について「日本の自発的な真の謝罪を期待する」との要求を発表したのは1月9日だった。その日、北朝鮮との南北対話は大きく動いた。

 金正恩・朝鮮労働党委員長が元旦の演説で「五輪に代表団を派遣する用意がある」と述べたことに文政権が反応し、電撃的に閣僚級会談を開始したのだ。

 そこで北朝鮮の五輪参加が合意に至ると、実務者協議では230人規模の応援団の派遣を北側が表明。「美女軍団」の来訪を韓国側は即座に歓迎した。この間、北朝鮮は「非核化」の要求にはゼロ回答を貫いた。

 北主導のシナリオに乗るばかりの文政権の姿勢には韓国内でも困惑が広がった。アイスホッケー女子で韓国側が合同チームを提案したことには、韓国代表のカナダ人監督が「北朝鮮選手を起用しろという圧力がないことを希望する」と吐露した。

 もちろん、“平和の祭典”に参加することが北朝鮮の核・ミサイル放棄につながるならば、意味のあることだろう。しかし、元朝日新聞ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏は、むしろ逆のシナリオを懸念する。

 「五輪成功という成果を前に浮き足立つ文氏の足元を見て、北側が“土壇場で不参加”をちらつかせながら、様々な譲歩を求めてくる可能性がある。すでに北朝鮮代表団の滞在費用を韓国側が負担することについて、“制裁違反”にあたるかもしれないと指摘されている。今後、北側は金銭的支援など様々な要求を突きつけてくるのではないか」

 それが金正恩体制を今のまま永らえさせることにつながりかねないわけだ。

 そもそも日韓の緊迫化と南北の接近が同時に起きたことも偶然とは思えない。2017年5月の大統領選の際、日韓合意の破棄を主張した元慰安婦の支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)」は親北団体として知られ、代表の夫と妹が北のスパイ事件への関与を疑われ有罪判決を受けた過去がある。

 慰安婦を巡って日韓が仲違いすれば、制裁を課す近隣国の足並みが乱れることにつながり、北朝鮮にとって都合がいいことは確かだ。

 「北側の思惑通りに文氏が動いてしまっている現在の状況は、平昌五輪ならぬ、“平壌五輪”とでも呼びたくなる。肝心の安全保障問題で何一つ譲歩を引き出していないのに、あたかも融和ムードが解決につながるかのように勘違いしている」(ジャーナリストの室谷克実氏)

 ※週刊ポスト2018年2月2日号