【最新国防ファイル】南西諸島部など離島防衛の要「即応機動連隊」 時速100キロで走行、戦車並みの攻撃力

即応機動連隊の中核装備となる「16式機動戦闘車」。時速100キロで疾走する

 防衛省が新しく打ち出した防衛戦術「統合機動防衛力」を実現するため、2018年3月までに部隊の新編・改編が相次ぐ。その1つが「即応機動連隊」の誕生だ。これまでの陸上自衛隊にはないコンセプトの部隊となる。

 名前の通り、「即応能力」および「機動展開能力」の高い部隊だ。有事ともなれば、「警備区域」という管轄地域に限らず、必要とされる場所へと速やかに展開し、鉄壁な防御態勢を築く。

 これまでは、普通科(歩兵)や、機甲科(戦車)、特科(大砲)など、各部隊で足並みをそろえて展開する必要があった。だが、それでは時間がかかってしまう。

 そこで、これら部隊を1つにまとめ、すぐに飛び出していける態勢としたのが即応機動連隊である。一から作るのではなく、普通科連隊を改編し、そこへ職種の違う部隊を組み込んでいく。今年4月からスタートするのが、第15普通科連隊(香川県・善通寺)と、第42普通科連隊(熊本県・北熊本)を改編した2個即応機動連隊だ。

 即応機動連隊の中核装備となるのが「16式機動戦闘車」だ。Maneuver Combat Vehicleの頭文字を取ってMCVと呼ぶ。8輪タイヤの車体に砲塔を搭載し、装甲車のような機動性と堅牢(けんろう)性を持ち、戦車のような攻撃力を有した新しい装備だ。

 陸自の主力戦車である74式戦車と同じ105ミリ砲のため、砲弾の共用も可能である。近年、装甲を貫くことができる徹甲弾(APFSDS)の能力が向上しており、120ミリ砲を持つ90式戦車と比べても、攻撃力にさほど差が出ない。

 それでいて時速100キロで一般道を走行でき、重量を26トンと抑えたことで、航空自衛隊の輸送機C2に積載できる。「統合機動防衛力」には必要不可欠な装備である。

 戦車の延長線上にある新装備という位置付けのため、改編後を見越して、第42普通科連隊長には、普通科ではなく機甲科出身の幹部が着任した。これは異例のことである。

 MCVを配備した機動戦闘車隊に加え、96式装輪装甲車が配備された4個普通科中隊が主たる戦闘部隊となる。これに火力支援中隊、重迫撃砲中隊、高射小隊などが加わる。

 まず、九州に即応機動連隊を置いた理由は、日本の南西諸島部に、部隊を速やかに展開したい考えがある。自衛隊の常駐していない島々へ渡り、MCVを中心として死守する。今後は、北海道や東北にも即応機動連隊が創設されていく計画だ。

 一方で、本州の戦車部隊はすべて廃止し、北海道と九州にのみ置くことが決まっている。本州でMCVを配備した即応機動連隊を次々と新編して、戦車部隊と置き換えていく考えもある。

 ■菊池雅之(きくち・まさゆき) フォトジャーナリスト。1975年、東京都生まれ。陸海空自衛隊だけでなく、各国の軍事情勢を取材する。著書に『こんなにスゴイ! 自衛隊の新世代兵器』(竹書房)、『ビジュアルで分かる 自衛隊用語辞典』(双葉社)など。