【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】天災対応は個人任せの日本 震災からまだ立ち直れない人たちがいる実情

神戸市が復興住宅としてURから借り上げていたマンション。2016年に住民の退去期限を迎えた=神戸市兵庫区

 群馬県・草津白根山で噴火が起きて死傷者が出た。震災や噴火は、これからも日本のどこかを必ず襲って来る。

 折しも先週17日は阪神淡路大震災から23年の記念日だった。遠くなった震災の記憶を呼びさます記事は多かったが、震災からまだ立ち直れない人がいることはほとんど報道されなかった。

 「借り上げ復興住宅」というものがある。震災後、兵庫県内の自治体が都市再生機構(UR)や民間から借り上げ、被災者に提供した住宅だ。兵庫県と県下の神戸、西宮、尼崎、伊丹、宝塚の各市が最多時に7000戸以上を供給した。

 この借り上げ復興住宅には20年という契約期限がある。しかし生活の再建ができずに、今でも借り上げ復興住宅から出ていけない人が多い。

 2015年度から順次、この契約期限が来ているが、18年度にピークを迎える。18年度は145団地のうち60団地にもなる。

 自治体によって入居者が期限後も入居できる要件は違うが、もっとも厳しい神戸市と西宮市は借り上げ復興住宅の一部の住民に明け渡しを求めて提訴した。神戸市は9世帯に訴訟を起こし、西宮市も7世帯に訴えを起こしている。

 昨年10月に、その最初の裁判の結果が神戸地裁で出た。被告は一人暮らしの79歳の女性。判決は女性側に部屋の明け渡しと契約期限後の家賃の支払いを命じた。

 高齢の一人暮らしが多い入居者にとっては裁判に被告として引きずり出されるだけでも大変なストレスになろう。住み慣れた部屋から追い出されれば、親しんできた近くの親睦の輪が失われるかもしれないし、命や健康が害されるかもしれない。

 この女性は、住んでいたマンションが震災で半壊し、避難所生活を経て、地震後7年もたった02年にようやく復興住宅に入居した。13年には腰を骨折して室内移動にも歩行器が必要になった。いま借りている復興住宅は段差がなく、室内には手すりがついており、暮らしやすいという。

 裁判に負けた女性の代理人弁護士は判決を不服として大阪高裁に控訴した。結果が出るのは、まだ先になる。

 他方、宝塚市と伊丹市では、すべての居住者に期限後の継続入居を認めている。高齢者が多く、転居の負担を考慮したためだと言う。

 一方、自治体の側にも震災の後遺症が現れている。兵庫県では職員の給与や定数削減などを行って、18年度には震災後初めて年度ごとの収支不足は解消する見通しだが、震災関連の借金残高は4000億円を超えている。将来の借金負担の重さを示す「将来負担比率」は都道府県別の16年度の決算では10年連続の最悪県になっている。

 地元自治体の職員にとっても地震は大変な負担だ。多くの場合、自らも被災者である地元の公務員が自分の家や家族をほったらかして不眠不休で働くことになる。阪神淡路大震災はもちろん、16年の熊本地震もそうだった。

 過去に学び、それに賢く対処することが人類の知恵なのだが、それがなかなかできなくて自治体まかせ、個人まかせなのが今の日本なのである。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『完全解説 日本の火山噴火』(秀和システム)。