【小池百合子 強く、そしてしなやかに】東京一極集中と2018年問題を混在させる政府に疑問 大学の「価値と魅力の競合」こそ重要

世界の大学ランキングで46位に落ち込んだ東京大学の赤門

 本格的な大学入試シーズンを迎えた。受験生の皆さんは体調に気をつけながら、積み上げてきた実力を存分に発揮してほしい。

 その大学を取り巻く環境に異変が生じようとしている。もはや激変といったほうがよいだろう。政府は「東京一極集中の是正」を理由に、東京23区内の大学の定員増を10年間認めない法案を通常国会に提出するというのだ。

 時代の変化が激しいなか、日本の大学はどうあるべきかといった教育の本質論を飛び越し、東京という「場所」だけを理由に、選択の自由を奪うやり方には疑問を抱かざるを得ない。

 今年、18歳以下の人口がさらに減少期に入り、学生の獲得競争の激化が見込まれることから、「2018年問題」と呼ばれている。17年に約120万人の18歳人口は、40年には約88万人に減少すると見込まれているのだ。

 だからといって、東京vs地方で学生の奪い合いに興じている場合ではない。

 かつては世界の大学ランキングで必ず上位にあった東京大学は、最新情報では46位(タイムズ・ハイヤーエデュケーション調べ)で、シンガポール大学(22位)や北京大学(27位)、中国・清華大学(30位)の後塵(こうじん)を拝している状況だ。

 人材こそがわが国最強、最大の資源のはずが、最高位の大学でさえ、優位性が失われつつあるのは憂慮すべき事態である。競い合うべきは日本vs世界なのだ。

 場所と大学の関係で言うなら、最近、学生にも企業にも人気が高いのは秋田県立国際教養大学や金沢工業大学などだ。地方でキラリと光る大学が目を引く。ハーバード大学やオックスフォード大学など、世界の一流大学の多くも地方に位置している。場所の問題ではなく、大学の価値と魅力の競い合いこそ問うべきではないか。

 東京の大学定員は、高度成長期の1959年に制定された大学などの新増設に関する「工業(場)等制限法」で規制されてきた。しかし、産業構造の変化や少子化の進行、都心の空洞化懸念を受けて、2002年の小泉純一郎政権で廃止された経緯がある。

 当時の規制改革の推進に関する答申では、「魅力ある都市環境のためにも、都心部における優れた高等教育機関の整備充実が必要不可欠」と指摘していた。少子化を「国難」とも位置付ける政府が、高度成長期と同様の抑制をすることに首をかしげざるを得ない。

 東京都が運営する首都大学東京(旧東京都立大)は「人生100年時代」に、学びたい人が学び続けられる環境を整えつつある。18年度予算案に、意欲ある高齢者が学生として学べる「100歳大学」事業を盛り込んだのだ。未来を担う若者と、経験を重ねたシニアが共に学び合うキャンパスは刺激に満ちたものとなるだろう。大学の新しいあり方を示したい。

 東京一極集中と大学の問題が混在する今回の政府提出法案は、「百年の計」が求められる教育分野に新たな問題を課すことになろう。(小池百合子・東京都知事)