【ケント・ギルバート ニッポンの新常識】政治家が憲法9条の性善説を唱える矛盾 スパイ、ハニトラ…仮想敵国には容赦ない「外交」の世界

額賀氏(写真)と、玉木氏。それぞれ権力闘争に対峙している

 産経新聞によると、自民党額賀派(平成研究会)で、額賀福志郎会長の退任を求める「額賀降ろし」が勃発したという。派内から十分な数の閣僚を送り込めないなど、額賀氏の政治力への不満が以前からあるようだ。

 一方、希望の党の玉木雄一郎代表は、党創設メンバーである松沢成文参院議員団代表らと対立し、「分党」の可能性が現実味を帯びているという。同党は、憲法改正や安全保障法制を容認する政策を掲げて旗揚げし、昨年の衆院選を戦ったが、玉木氏が軌道修正しているとされる。

 玉木氏としては、民進党や立憲民主党に近い政策を示して、「野党共闘路線」に軸足を移す狙いがあるようだ。党を創設した前代表、小池百合子都知事のイメージ払拭も目指しており、「小池氏の顧問辞任も検討か」という報道もあった。

 ネット上には、他人の戸籍を盗んで本人に成りすます「背乗りのようだ」と批判・揶揄(やゆ)する声も見られた。

 性善説を好む日本人も、日本の政界が与野党を問わず、「裏切り」や「変節」「だまし合い」などの“仁義なき戦い”を繰り広げてきた事実は否定できないだろう。

 ただ、日本人は「嘘をつかない」ことや、「卑怯(ひきょう)なまねをしない」ことが美徳なので、日本政界の“仁義なき戦い”は、まだかわいいレベルだと思う。権力闘争に敗れても、死刑や流刑になる心配はないから、双方とも緊張感が足りない。

 政治上の権力・勢力争いは、日本の国内だけで起きるわけではない。20世紀の「冷戦」は、米国とソ連の勢力争いそのものだった。私たちは国際政治上の勢力争いのことを、「外交」と呼んでいる。

 外交の世界では、自国の権益を侵害する恐れがある「仮想敵国」には容赦がない。米国はソ連に、ソ連は米国に大量のスパイを送り込み、機密情報を盗んだり、重要人物にハニートラップを仕掛けて脅迫したり、金を渡して祖国を裏切るよう仕向けてきた。

 スパイ行為が発覚したら死刑になる国も少なくないが、スパイ防止法や国際諜報機関のない日本はやられる一方で、十分に反撃できない。

 国内政治の権力争いと、外交との最大の違いは、国際紛争を解決するために「軍事力」を行使する権利が外交手段として認められている点である。ところが、日本は戦後、GHQ(連合国軍総司令部)によって、「交戦権」という最強の外交手段を奪われた。

 政治家は自分たちの激しい権力争いを思い出せば、憲法9条という「性善説」を維持しろとは絶対に言えないはずだが…。

 ■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。