【日本の解き方】後継者不在のアベノミクス 憲法以外の対案乏しい石破氏、財務官僚に囲まれた岸田氏

アベノミクスへの対案乏しい石破氏の派閥政策集

 以前の本コラムで、「ポスト安倍は財政再建論者ばかりだ」と書いた。アベノミクスの基本路線を踏襲する後継候補者はなぜ出てこないのだろうか。

 9月には自民党総裁選がある。今年は国政選挙がないなか、唯一の大きな政治イベントといえる。石破茂元幹事長は、『石破茂と水月會の日本創生』という派閥政策集を出した。その中で、石破氏は、持論の憲法改正について「9条2項削除」を主張している。これは、もともと保守系政治家が主張していたことで、安倍晋三首相が、現実的な憲法改正をにらんで9条1項と2項をそのまま残すことに対抗したものだ。

 しかし、政策集ではアベノミクスへの対案は乏しい。そもそもマクロ経済政策への言及はほとんどなく、外交にも触れていない。

 ミクロ経済政策についてはこんな動きがあった。石破氏は、チケット転売について従来の転売規制を強化する議連を率いているが、そこで転売規制強化の議員立法を明言したのだ。

 チケット転売問題の解決は規制強化ではなく、経済原理にもとづいたオークション導入や2次転売市場の整備というのがセオリーだ。

 だが、石破氏が掲げたのは正反対の方策だ。ここが石破氏の経済政策の限界だと筆者は考える。

 石破氏はまた、マクロ経済では、経済成長よりも財政再建を重視するコテコテの財政再建論者として知られている。

 財政再建といえば、岸田文雄政調会長の動きも気になる。自民党の財政再建に関する特命委員会を開き、財政再建の議論を本格的に開始すると報道されている。

 内閣府が国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化時期を後退させる試算を出しているため、社会保障費や地方交付税の伸びを抑えるという趣旨のようだ。

 岸田氏は政界で有名な「宮沢ファミリー」の一員である。この家系には、一族や婿などにキャリアの財務官僚が数多くいる。岸田氏はいわば財務官僚に囲まれているわけなので、いずれ財政再建路線になるだろうと見透かされていたが、やはりその通りだった。

 財政再建については、日銀を含めた統合政府でみれば、既に完了している。というのは、連結ベースのバランスシート(貸借対照表)でみて、負債と資産はほぼ見合っている。ということは、借金の利払いはあるが、それとほぼ同額の税外収入があるので、借金問題は実質的になくなっているといえるのだ。

 政府の各種の財政試算では、すべての税外収入を含んでいないので、基礎的財政収支がバランスしていないように見えるだけだ。

 緊縮財政をする必要がないのに、誤った事実認識の下で、緊縮財政を推進したら経済がダメになるに決まっている。そして他の政策もできなくなる。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)