【日本の解き方】金融庁検査とコインチェック 厳しい処分なら存続危機、税務署は有力な課税資料を入手

金融庁が立ち入り検査に入ったコインチェックの本社が入るビル。建物前には報道陣が集まった=2日午前、東京都渋谷区

 コインチェックからの仮想通貨流出をめぐって、金融庁は業務改善命令を出した後、コインチェック側からの報告を待たずに立ち入り検査に入った。

 仮想通貨交換業者(取引所)については、2016年5月に法改正が成立し、17年4月から登録制となっている。

 そこでは、マネーロンダリングやテロ資金供与対策の規制として、口座開設時における本人確認の義務付けが、利用者保護のためのルールの整備として、利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理が要請されている。

 ただし、登録制導入時に、取引所を営んでいた業者は、登録申請すれば「みなし業者」として営業を継続できる。これはあくまで経過措置で、コインチェックを含め16社がみなし業者だ。

 登録の要件は形式的であり、事前相談が3~4カ月、実際の登録申請は1~2カ月で終了する。コインチェックが未登録ということは、本人確認義務もしくは分別管理に問題があったのかもしれない。

 もっとも、みなし業者であっても、これらは法令に基づく義務であるので、問題があるままで、許されるはずない。金融庁の立ち入り検査では、これらの点が法令違反として指摘されるかもしれない。

 過去の類似法令による行政処分は、多くの場合が金融検査の結果に基づくが、法令違反があれば営業停止になるのが一般的だ。筆者は、旧大蔵官僚時代に金融検査などの経験があるが、こうした新しい業界の事業者に対する初めての金融検査では、法令違反が見つかるケースがほとんどだ。

 もちろん、軽微なものであれば営業停止という重い処分とはならないが、今回の場合、社会的な影響も大きいので、法令違反が確認された場合、厳しい処分になるだろう。

 コインチェックは失われた仮想通貨の一部を顧客に返済すると表明しているが、金融庁は、その財産的な裏付けなども金融検査で明らかにしようとしている。同社をめぐっては、直近の売買代金から十分な財産的な基盤があるとの観測もあるが、問題は今後、どうなるかだ。

 金融庁が検査を実施した後、税務署も税務調査に入る可能性もある。その際、財務状況のみならず、26万人の顧客情報も税務署は入手するだろう。

 コインチェックが現金で返済すれば、多くの顧客は確定益となって、雑所得として確定申告対象になる。税率は一般的な金融商品の分離課税より高いので、税務署にとって26万人の顧客リストは有力な課税資料になる。

 そうしたなかで金融庁が厳しい処分を下した場合、コインチェック自体の存続の危機になるかもしれない。

 金融庁は、事業者が登録されている場合でも、そこで扱う仮想通貨の価値を保証・推奨しないと強調している。仮想通貨は、法定通貨でなくインターネット上の電子データにすぎないという立場だ。

 金融庁のさじ加減に今後の仮想通貨の命運が握られている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)