【ここがヘンだよ!日本】「一票の格差」軽視するな 「合区解消」なら…衆議院・参議院のありかた根本から見直しを

自民党憲法改正推進本部の会合=東京・永田町、自民党本部

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 自民党が憲法改正に「参議院の合区解消」を盛り込む方向で調整している。

 「合区」こと合同選挙区は2016年の参院選から導入され、「鳥取県と島根県」「徳島県と高知県」は、1つの選挙区として扱われた。

 これら4県は有権者数が最も少ない県で、それぞれ隣接している。総務省のデータによると16年の参院選時における鳥取県の有権者数は48・3万人だが、東京都の有権者数は1115・7万人と20倍以上で、参院選では6の議席(185・9万人に1人)が割り当てられている。仮に、鳥取県に議席が1つでも割り当てられれば、4倍近い「一票の格差」が生じてしまう。

 合区は、こうした問題を解決する論理的な帰結として導入され、この結果、選挙区間の最大格差は前回の4・769倍から3・077倍と大きく縮小した。政府として、国民の一票の価値を平等にするよう努力する義務は憲法14条に定める、いわゆる「法の下の平等」に基づき直接的に導かれるもので、その意味では評価すべきであろう。

 他方、こうした合区を批判する理屈として、「完全に人口に比例させて議席を配分すると、現実には多数決の原理の中で『都会優先の政治』が行われ、地方が不利益を被ることになってしまいかねない」という主張も根強く一理ある。

 そのため各国では、二院制の中で「上院と下院の役割を分担する」ことで、理論と現実の間を埋める解決策を見つける努力を重ねている。

 例えば、米国では下院は完全に人口比例で議席を配分し、一方の上院では人口に関係なく各州ごとに2人ずつ議席を割り当てている。この基準だと、下院ではほぼ完全に投票の価値が平等になるが、上院では70倍近い「一票の格差」が生じてしまう。こうした選出方法の違いを踏まえて、上院と下院の役割分担をしているのだ。

 残念ながら、わが国の参議院は「衆議院のカーボンコピー」と揶揄(やゆ)され、衆議院との役割分担がはっきりしていない。

 こうした中で、これまで最高裁判所は苦渋の選択として、投票価値の平等性を理想としつつ、他の要素も考慮して最低限満たすべき基準として、おおむね「衆議院については2~3倍まで、参議院については5~6倍まで」の一票の格差を容認するものとしてきた。

 しかしながら、これもまた逆説的に参議院が衆議院のカーボンコピーであることの証であろう。

 今後、地方から人口減少社会が訪れてくる中で、合区無しでは参議院の一票の格差を合理的な範囲に押し止めることはできないだろう。そのため、仮に自民党議員が「参議院は合区など導入せず、一票の格差を無視してもいい」というのならば、それに見合った衆議院・参議院それぞれのあり方を根本から見直していく必要がある。

 そうした議論をせずに、ただ、「うちの県に議席を寄こせ」というならば、それは「民主主義軽視の選挙目当て」と批判されても仕方ないだろう。

 ■宇佐見典也(うさみ・のりや) 1981年、東京都生まれ。東大経卒、経産省入省。企業立地促進政策、農商工連携政策、技術関連法制の見直しを担当後、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で電機・IT分野の国家プロジェクトの立案やマネジメントを行う。2012年9月に経産省を退職。現在、政策コンサルタントとして活躍する。著書・共著に『30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと』(ダイヤモンド社)、『朝日新聞がなくなる日-“反権力ごっこ”とフェイクニュース』(ワニブックス)など。