《zak女の雄叫び お題は「輪」》衆参両輪が回転狂った額賀派騒動

自民党の額賀福志郎元財務相=1月25日、東京・永田町(斎藤良雄撮影)

 自民党第3派閥の額賀派(平成研究会)の“お家騒動”は、タイヤが外れ、コントロール不能になった車をみるようだった。衆院と参院という両輪がうまく回転しないと、派閥という乗り物は壊れかねないことを白日にさらした。

 今秋の自民党総裁選をめぐっては、安倍晋三首相(党総裁)の3選が濃厚といわれる中、永田町では早くも「ポスト安倍」をにらみ、各派閥のさや当てが始まっている。

 二階俊博幹事長率いる二階派(志帥会)はいち早く安倍3選支持を打ち出し存在感を高めている。首相の最側近である麻生太郎副総理兼財務相がトップの麻生派(志公会)は、昨年7月に山東派などと合流し、額賀派を抜いて党内第2派閥に躍進した。

 一方、かつて党人事や国会運営を支配し、泣く子も黙る最強集団といわれた経世会を前身に持つ額賀派の存在感は低下。所属議員には政権の重要政策を担う茂木敏充経済再生相と加藤勝信厚生労働相がいるものの、党勢回復の展望は開けないままだ。「ポスト安倍」候補として有力視される岸田文雄政調会長を抱える岸田派(宏池会)や、石破茂元幹事長の石破派(水月会)に比べても党内で埋没しつつある。

 派閥の低調に業を煮やした額賀派の参院側が、所属する参院議員全員の集団離脱も辞さない構えで額賀福志郎会長の1月中の退任を求めたのが騒動のはじまりだ。2月8日の派閥例会でも額賀氏は自身の進退を明言しなかったものの、3月の派閥パーティーで退任することがほぼ固まった。これを受け、“最後通告”を突きつけた形の参院側も戦闘モードはトーンダウン。とはいえ、「負けるけんかはしない」(額賀派参院幹部)と堂々啖呵を切って派閥領袖に強引に退任を迫ったやり方は党内で波紋を呼んでいる。対立激化が表面化した衆院と参院の溝が簡単に埋まるとも思えない。新会長に就任予定の竹下亘党総務会長は派閥運営に難航するだろう。

 今回の騒動を通じて感じたのは、派閥という国会議員の“互助会”のような装置自体が古くなっているのではないかということだ。選挙制度が、派閥が選挙区で権力闘争を繰り広げ、切磋琢磨した中選挙区制から小選挙区制に変わり、選挙資金や党公認など議員の“生死”を左右する決定が党総裁に集中するようになった。さらに第2次安倍政権は官僚の人事を“人質”に政策を掌握し、官邸主導の政権運営で衆参国政選挙5連勝という未踏の強さを維持している。

 「政高党低」が定着すると、首相やその周辺との人間関係と政策実行能力があれば、派閥の後ろ盾は不要なのだろうか。実際、当選回数と所属派閥の影響力で閣僚ポストが回ってくる時代は終わりつつある。

 ある派閥に所属する若手議員は「選挙で世話になった人の推薦で派閥に入ったが、メリットはあまり感じない。これからは政策を旗印に議員が集まり政治を動かす時代になる」と話す。無所属の30代の衆院議員は「SNS(ソーシャルネットワーク)が定着した今は、有権者とも海外とも簡単につながることができる。派閥って酒を飲みながら人の噂話しているだけでしょ」などと驚くほど冷淡だ。

 政治部記者で自民党を担当すると、派閥ごとに取材するのが当たり前のため、メディアの発信も時代遅れなのかもしれないと考えさせられる。これからの派閥のあり方は日本政治の行く末でもある。

 確かに言えることは、額賀派取材で面白いのは国会議員の人間性がむき出しになる点だ。一派閥の騒動は政界全体に波及し、党内の他派閥や野党だって無関心ではいられない。噂、嘘、悪口、でたらめ、はったり、でまかせ…。裏付けのない話が飛び交い、真偽の判断が難しい。それ故、記者の勘や胆力が問われ、取材先と信頼関係を築けるかどうかの勝負時でもある。「ガセネタをつかまされた」と1人冷や汗をかくことも…。

 正直、額賀氏の進退に関する堂々巡りの発言は金輪際御免だ。でも、政局取材で鍛えられ、人脈が広がるのであれば、それはそれで楽しいのも事実だ。(M)

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 子供の頃、縁日での輪投げが苦手だった。今もスクープ狙いでネタを投げるも、的を外すことが多く、落ち込む日々。

【zak女の雄叫び】取材や日常…。女性記者21人が月ごとのキーワードで本音を綴るリレーコラムです。2月のお題は「輪」です。