【国防最前線】陸自ヘリ墜落にみる防衛費の絶対的不足 問題視される「部品枯渇」

陸自ヘリの墜落現場を調べる関係者ら=6日、佐賀県神埼市

★(1)

 陸上自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプターが5日、佐賀県神埼市の民家に墜落したことの衝撃は計り知れない。

 陸海空自衛隊の中でも、とりわけ地域との結びつきが強く「地元の人々のために」という活動が最も多いのが陸自である。日ごろから、きめ細かい気遣いで関係を維持してきた。地域の祭りに参加したり、雪かきもする。そこまでするのかということも多々あるが、「国民保護につながる」という信念に基づいていたのではないだろうか。

 その陸自ヘリが民間人を負傷させたことは、殉職した自衛官2人にとって、どんなに無念だっただろうか。民家にわざわざ被害を及ぼそうという自衛隊のパイロットは1人もいない。これまでも不具合で不時着や脱出を試みようとしたが、民家を避けようとしたために殉職した事例があった。

 わが身を犠牲にしても、民間人の生命を守ろうとする人たちであることを考えれば、今回の事故は、まったく制御不能だったのだろうと想像する。おそらくパイロットは最後まで操縦桿(かん)を握り、「人々を傷つけまい」と努力したに違いない。家の中にいた女児が軽傷だったことは2人の強い祈りが通じたとしか思えない。

 事故の直接的原因はやがて明らかになるだろうが、最新の報道では、直前に交換された部品は中古だったということだ。

 新品でも不良品はあり、中古でも信頼できるものを使う場合はある。そのことが原因とはいえないが、ボーイング社製品の一部部品は韓国でも製造しているという。そうした下請け工場レベルまで調査ができるのか気になる点である。

 また、かねてより自衛隊の各所で「部品枯渇」が問題視され、部品をいわば移植手術する「共食い」が日常化していたことにも注意を払いたい。

 こうした実態は、大臣クラスが視察に行っても分からない。部品を取られて飛べない飛行機を見せる現場などないからだ。訪問は現場の励みにはなるが、実態把握にならない。これまで何度も言い続けてきたが、自衛隊は「できません」とは絶対に言わない組織だ。ぜひ、実情を知るためにOBなど事情通から聞き取りをしてほしい。

 根本的な要因は、やはり「防衛費が絶対的に不足している」ことにある。単に増やして改善される問題ではなく、むしろ、調達時にランニングコストが十分に予想できていないことが問題だ。

 例えば、購入する装備品が〇億円だとしても、補用部品や環境整備費が加われば、簡単に数倍にも膨れ上がる。購入時の担当者は良かれと思って決めるかもしれないが、大体1~2年で人事異動となり、コストが増大しているときにはいなくなっているのだ。

 今後、その懸念がある装備の筆頭はオスプレイだと言われていたが、今回の事故は、皮肉にもその配備予定地で起きてしまったのである。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 防衛問題研究家。1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。テレビ番組制作などを経て著述業に。防衛・安全保障問題を研究・執筆。著書に『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)、『自衛官の心意気-そのとき、彼らは何を思い、どう動いたか』(PHP研究所)など。