【永田町・霞が関インサイド】紆余曲折TPP交渉がやっと決着 合意漕ぎ着けた“変わり種”タフネゴシエーター

TPP11の首席交渉官会合=1月、都内

 3月8日、米国を除く環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の参加11カ国(TPP11)は、チリの首都サンティアゴで署名式を開催する。

 1月23日に東京で開かれたTPP11の首席交渉官会合で協定内容が確定したが、そこに至るまでの交渉は紆余(うよ)曲折を経た。

 昨年11月にベトナム・ダナンのTPP閣僚会議での大筋合意時に残された継続合意の4項目のなかで、最も難航したカナダが要求した「文化例外」(自国産コンテンツに対する優遇措置)が決着をみたのだ。

 ケベック州などフランス語圏を持つカナダは、仏語の自国産コンテンツを重視、保護してきた。

 住民が仏語のみ話す選挙区選出のフランソワフィリップ・シャンパーニュ国際貿易相が、例外措置に強くこだわったことから、交渉は一時、暗礁に乗り上げた。

 最後は、国際協調路線を採るジャスティン・トルドー首相と、クリスティア・フリーランド外相が協定外約束を結ぶことで決断した。

 トルドー首相は、父のピエール氏も首相を務めた政治家ファミリー出身で、自由党党首として臨んだ2015年10月総選挙で圧勝し、首相に選出された。

 一方、フリーランド外相はウクライナ系カナダ人で、英国の名門オックスフォード大学卒業後、英紙フィナンシャル・タイムズ、英誌エコノミスト、加紙グローブ&メールなどを経て下院議員。まさにグローバル派だ。

 それはともかく、TPP11は世界の国内総生産(GDP)の12・9%、貿易額の14・9%を占める超・自由貿易協定(FTA)である。

 わが国にとっては、昨年7月の日EU(欧州連合)首脳会談で大枠合意、12月の交渉妥結に至った日EU経済連携協定(EPA)に匹敵する通商戦略の肝である。

 その意味で、TPP11署名合意に漕ぎ着けた茂木敏充経済財政・再生相の働きもさることながら、交渉責任者の梅本和義TPP等政府対策本部首席交渉官(1977年外務省入省)は、タフネゴシエーターとして特筆に値する。

 同氏は外務官僚としては東京大学大学院理学系研究科修士課程(数学専門課程)修了という“変わり種”である。筆者も長い付き合いだが、その温厚な性格は省内外で知られるところだ。

 TPP交渉を所管するのは、外務省経済局(山野内勘二局長・84年)と経済産業省通商政策局(田中繁広局長・旧通産省85年)である。

 前者作成のファクトシート「米国離脱表明後のTPP」は秀逸であり、経済記者必読である。(ジャーナリスト・歳川隆雄)