【真・人民日報】ナンバープレート目当てのEV人気 飽和近づき、未来に暗雲も

 このニュースをいったいどう受け止めたらよいのだろう。

 2017年12月10日に北京市共産主義青年団の機関紙『北京青年報』が報じた電気自動車(EV)に関する特集記事だ。

 記事のタイトルは、〈北京市で新エネルギー車(電気自動車)のナンバープレート申請者の数が12万を上回る 来年の枠もすでにいっぱいに〉。

 記事の内容は、タイトルの通り電気自動車の購入希望者が急増しているというもの。昨年、本格的にEVへと舵を切った中国政府にしてみれば狙い通りといったことかもしれない。

 だが、それほど単純な話ではない、と語るのは、EV事業も手掛けるコンサルタントだ。

 「そもそも消費者が、慣れ親しんだガソリン車ではなくEVを購入しようと決心する動機は、都会では入手が困難であるナンバープレートを手に入れやすいということです。北京では単純に倍率が高すぎますし、上海でナンバープレートを手に入れようとすれば、車を購入するほどのコストがかかりますから」

 「その意味では、都会でEVへの需要が喚起されるのは、当初の見込み通りということがいえるのです。しかし、EVでも同じようにナンバープレートの問題があるとすれば、この需要も数年間で消えてしまうかもしれませんからね」

 昨年10月、私は北京でEVの関係者と多く接触し中国のEVの未来について記事を書いた。

 その時の印象で気になったのが、「官」と「民」で見通しに大きな差があったということ。

 非常に強気で前向きだった各EVメーカーに対して、監督官庁の官僚たちは、概して冷めた見方をしていたという構図であった。

 EVメーカーが前途を信じていたことについては、それほど説明の必要はないだろう。気になるのは官の冷め方だ。

 例えば、中国汽車工業協会--そう聞けば日本人はメーカーの集まりを想像するかもしれないが、中国では官僚組織である--の関係者だ。

 その人物は、はっきりと「2020年の時点でもう一度EVシフトを見直す可能性」にも言及しながら、こう語った。

 「少なくともEVの需要は都会にしかない。その都会で最もネックになるのは充電の不便さ。これを補うとすればナンバープレートの入手のしやすさ。そのメリットがなければEVを選ぶ消費者は少ない」

 そのナンバープレートが飽和すればどうなるのか。

 現状、北京では2018年から20年の3年間の自動車登録数の増加上限を30万台に設定している。

 これは毎年10万台の増加となることを意味しているが、うちEVの割り当ては4割。この計算によればもはや18年の枠はいっぱいだということ。

 つまり20年を待たずに、何らかの決断をすべき状況だということだ。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。