【国防最前線】政府は部隊・装備の必要性示せ 100%安全な乗り物なし、事故があればひたすら謝罪では…

沖縄県うるま市・伊計島の砂浜に不事着した米軍UH1ヘリコプター=今年1月

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 佐賀県での陸上自衛隊ヘリコプターの墜落事故後、政府関係者は平身低頭で、ひたすら謝罪をしている。腫れ物に触るようにわびている姿に、口には出さないまでも憤りを感じている自衛官が全国に少なからずいる。

 「なぜ、殉職した隊員に対する弔意を表さないんだ」と。

 これには、「民間人に多大な被害と迷惑をかけたのだから、当たり前だ」「関係議員や防衛省の苦労を分かっていない」と反論したい関係者もいるだろう。

 事実、基地や駐屯地を置いてもらうということは長年にわたる交渉努力と、防衛予算の中から多大な金額を割いて折衝してきた成果である。だが、悔しい、やりきれない気持ちは隊員たちの偽らざる本音である。政治的な事情など知らない隊員には、政府の姿勢は非情にしか映らない。

 私が事故がある度に感じるのは、国が装備などの安全性を約束しようとするのは無理があるということだ。安全性を追求することは大事だが、その部隊や装備がなぜ必要なのかという「必要性」は、ほとんど語られない。あたかも自衛隊や米軍は迷惑なもので、地元に我慢して置いてもらっているかのようだ。

 防衛予算における基地対策費は多額で、米軍だけでなく地方自治体の要望に応じているものも多い。いずれにしても、訓練の必要性が語られないまま、事故が起これば飛行停止ということを繰り返せば、操縦士や整備員の練度をどう保てばいいのか。100%安全な乗り物などなく、高い安全性を証明できたとしても不安を持つ人がいる限り、理解は得られない。

 一方、米軍機による事故も多発している。米政府監査院などは「訓練時間の不足」「部品が間に合わず整備不良になっている」といった調査結果を公表している。第7艦隊や海兵隊、空軍も、同様の結果となっている。原因は、オバマ政権時代の大幅な予算削減であることは明確なようだ。

 朝鮮半島危機や南シナ海で中国の活動が活発化していることで、警戒・監視の実任務が増えているのに、人や部品が足りないという。

 同じことが自衛隊にも起きている。今回の事故原因と結びつけることは避けたいが現実である。

 佐賀の墜落現場では、自衛隊による機体の回収が続けられている。いつものような災害派遣ではなく、「加害者」となった自衛隊にお礼を言う人もいない。田畑も私有地であれば所有者を探し、お願いすることから始めなくてはならず、途方に暮れる作業だ。

 だが、もし予算不足と任務増加が、日米ともに事故多発につながっているとしたら、彼らは「被害者」である。無意識の加害は他にもあり、航空機が予防着陸すると騒ぎ立てられるが、それに躊躇(ちゅうちょ)して事故になったら、誰が責任を取るのか?

 そうならぬよう、政府には「謝罪よりも必要性の説明」を求めたい。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 防衛問題研究家。1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。テレビ番組制作などを経て著述業に。防衛・安全保障問題を研究・執筆。著書に『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)、『自衛官の心意気-そのとき、彼らは何を思い、どう動いたか』(PHP研究所)など。