【国防最前線】トランプ政権「鼻血作戦」の落とし所、懸念される大統領の政治的判断基準

トランプ大統領(左)とマティス国防長官。「鼻血作戦」を練っているのか(ロイター)

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 北朝鮮情勢について、米政府や米軍関係者が「先制攻撃の準備はできている」と言えば、たちまちメディアで「第2次朝鮮戦争勃発か!」などという見出しが躍り、情報に戦々恐々とする状況が続いている。

 最近では、米国と韓国のメディアが「米国による先制攻撃『ブラッディ・ノーズ(鼻血)作戦』が行われるのか?」と報じていた。だが、スーザン・ソーントン米国務次官補は15日の上院外交委員会公聴会で、この作戦の存在自体を否定した。

 「鼻血作戦」とは、北朝鮮の核関連施設などを限定攻撃するものとされる。ジョージ・タウン大学教授のビクター・チャ氏の発言で出てきたもので、同氏がこれを忌避ししたため駐韓米大使指名が白紙撤回されたと伝えられている。

 しかし、前出の公聴会では、ホワイトハウス高官が「われわれはそうした作戦を話したことも、考えたこともない。そのような用語を使ったこともない」と説明したとしている。

 「鼻血作戦」の有無に関わらず、ドナルド・トランプ大統領に対し、多様な軍事オプションが示されていることは事実だろう。その中に「鼻血作戦」に似たものがあってもおかしくない。以前から明言されているように「すべての選択肢はテーブルの上にある」のだ。

 どれを選ぶかは「政治の決断」となる。その選択肢の1つ1つが、誰かの口から洩れるたびに騒ぎになる。

 米国メディアは政府高官たちがトランプ氏と異なる言葉を使えば、「矛盾する発言」として批判につなげたいようだ。

 実は、私も若干、この点は「トランプ政権の急所」になるような心配をしている。トランプ氏のツイッターと誰かの発言が違うということではなく、「大統領が軍事のプロたちのアドバイスを素直に理解するのか」「政治的な判断基準で捉えるのか」という点である。

 軍事的な解釈上は、現時点での北朝鮮への攻撃はまだ困難だ。北朝鮮が米本土や、その極めて近くにICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射するようなことになれば、自衛権を行使した武力行使は可能となる。

 だが、ミサイルや核実験をしている段階での武力行使は、国際社会の賛同や法的根拠は得られないと思う。逆に言えば、北朝鮮は攻撃を受けるギリギリのところで「交渉のチャンス」を待ちたいはずだ。

 私がトランプ氏の頭の中を懸念しているのは、今年11月に政権の信任が問われる中間選挙を控えているため、「何もしなかった」という烙印(らくいん)を押されたくないと焦ることだ。

 その活路を軍事攻撃に求める場合、韓国や在韓外国人の被害などの大きなリスクがある。かといって、「北朝鮮の核容認」となれば、世界や日本にとって、もっと大きな危険を伴う。

 これらのことを、日本としては諭し続け、「圧力路線のさらなる徹底」を求めるしかない。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 防衛問題研究家。1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。テレビ番組制作などを経て著述業に。防衛・安全保障問題を研究・執筆。著書に『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)、『自衛官の心意気-そのとき、彼らは何を思い、どう動いたか』(PHP研究所)など。