【国防最前線】自衛隊配備は「国を守る意志」 石垣市長選で印象操作、他国攻撃するかのように「ミサイル基地」

沖縄県・石垣島に配備されたPAC3。まさに国防最前線の島といえる

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 沖縄県では、名護市長選が終わり、次に注目を集めるのは3月4日告示、同11日投開票の石垣市長選であろう。おそらく、最大の争点は「自衛隊配備」となる。すでに選挙戦前夜のような雰囲気が島内に広がっているようである。

 そんななか、石垣島の各所に掲げられている看板や横断幕が気になるという、地元関係者の指摘を耳にした。それは「ミサイル基地配備反対!」という言葉だ。違和感があるのは「ミサイル基地」という文言だ。

 石垣島に今、陸上自衛隊の部隊配備計画が進められているのは事実である。だが、それを「ミサイル基地」と呼ぶのは、何か恐ろしい物を持ち込もうとしているという印象を与えているのではないか-というのだ。看板などを見た多くの人が、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)などをイメージしてしまうと。

 正直に言うと、私自身も「ミサイル」という言葉への抵抗感について気遣いをしたことがなかった。自衛隊が南西諸島に配備するものは、押し寄せる艦や航空機を撃退するための、地対艦誘導弾(SSM)と中距離地対空誘導弾(中SAM)で「純粋な自己防衛装備」である。確かに、すべて同じ「ミサイル」と表現すると誤解を招く。

 侵攻を企図し、上陸しようとする相手の意志を削ぐためには、「そこに行けば大きな損害を受ける」と思わせることが必要だ。人を置くだけでは隊員を危険にさらすことになる。

 また、「自衛隊による離島奪還」などと簡単に言われるが、まさか普通科(歩兵)部隊に、何の援護もなしに突入するような肉弾戦をさせるわけにはいかない。そこには火力による援護が欠かせない。大砲は昔から「戦場の女神」と言われ、戦う兵士の救世主なのだ。

 つまり「ミサイル」の配備は島を守り、そのために戦う人たちを守るためのものなのである。他国を攻撃する長射程のミサイルとは異なる。

 そもそも、なぜ今ここに自衛隊が必要なのかと言えば、これまで鹿児島から沖縄本島までの約600キロ、そして、沖縄本島から以西の日本の領土・領海約700キロ内には、宮古島の航空自衛隊レーダーサイトがあるだけで、まったくの空白地帯になっていたのだ。

 それぞれ、東京~広島間ほどの距離があり、日本であるにも関わらず、「よその国が自由勝手に入ることを容認している」ようなものだった。そうするうちに、中国の動きが目に余るようになっていたのである。「ここは、われわれの国だ」ということを、目に見える形で示しておくことは極めて重要だ。

 自衛隊配備を「周辺国にケンカを売る」という人がいるが、そうではなく、自分の家に表札を出すようなものである。国を守る意志を明確にすることは、むしろ国家間の作法ではないだろうか。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 防衛問題研究家。1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。テレビ番組制作などを経て著述業に。防衛・安全保障問題を研究・執筆。著書に『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)、『自衛官の心意気-そのとき、彼らは何を思い、どう動いたか』(PHP研究所)など。