【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】爆発的に増加する“人為的”地震 シェールオイルなど資源採掘で発生

2011年に米国オクラホマ州を襲った「人が作り出した」地震の被害のようす

 日本でのガソリンや灯油の価格が、昨年来高くなっている。風が吹けば桶屋が儲かるような話だが、米国で一時減っていた地震が、また増える兆候にある。

 サウジアラビアの政変や産油国の産油量の制限で原油価格が上がった。このため、コスト高で一時は減っていた米国のシェールオイルの生産量が再び高まり始めているのである。

 このところ人間が起こした地震が世界的に増えている。昨年秋に米国の科学雑誌に論文が載ったところでは、過去150年の間に、人間の活動が原因の地震が728カ所で起きた。大半は地震活動がほとんどなかった地域だった。だが、日本のようにふだんから地震が多いところでは、この種の地震が区別できないことが多いから、実数はもっと多いかもしれない。

 世界中で最も多い人為的地震の原因はシェールオイルなど資源の採掘だ。論文によると271カ所で地震が起きた。

 シェールオイルやガスの採掘には水圧破砕法が使われる。この方法は水、化学薬品、砂を混合した液体を高圧で地下へ注入して石油やガスを取り出すものだ。注入した液体が石油やガスを地表へ押し上げるだけではなく、化合物が含まれる有毒な地下水が大量に排出される。

 水圧破砕法が引き起こす地震には、高圧で地下へ液体を注入して地震を起こす直接的なものだけではない。作業で排出される廃水は再び地中に高圧で戻されるので、さらに奥深くにある岩盤の断層を滑りやすくしてしまう。

 水圧破砕法による掘削が盛んに行われてきた米国オクラホマ州では、以前は比較的地震が少なかった地域で年間数百回もの小規模の地震が起きている。2009年までは100回以下だった地震の発生数が、14年の1年で600回近くに、15年には907回にまで跳ね上がった。

 同州では11年に、M5・6の地震が発生した。同州では過去最大規模の地震で、煙突が倒れるなどの被害が出た。この地震で訴訟も起きている。

 従来の方法でのシェールオイルの採掘に限らない。最近では二酸化炭素注入技術が普及して、米国テキサス州西部で地震を起こしているのだ。

 地球温暖化対策として、大気中の二酸化炭素を地下に貯留する「温室効果ガス隔離政策(GCS)」が行われはじめた。米国だけではなく、日本を含む世界各国が動き出している。だが、地下深くに温室効果ガスを圧入することで新たなリスクが生まれている。

 テキサス州では04年から二酸化炭素を油井に注入するガス圧入法を採用し始めた。温室効果ガスを減らすだけではなく、二酸化炭素が溶け込むと石油が膨張して回収が容易になるという一石二鳥を狙った手法だ。しかしその直後から地震が増え始めた。

 このほか、この論文ではダムを作ったことで世界で167カ所、核爆発が起こした地震が22カ所、工事現場での地震も2カ所で確認されている。

 人間が地球に何かをすれば、それが地震という形で返ってくるのである。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『完全解説 日本の火山噴火』(秀和システム)。