【日本の解き方】継続と安定重視した日銀の人事、世界に誤解を与えない狙いも 5年間の実績は70点の及第点

黒田東彦総裁

 日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁が続投することになった。正副総裁人事をめぐっては、立憲民主党や共産党など金融緩和に否定的な野党が批判する一方、逆にネット上を中心に、現在の金融緩和姿勢では物足りないという意味で批判する声もあるようだ。

 先進国の左派政党は、金融政策が雇用政策であることを理解し、金融緩和に積極的だが、なぜか立憲民主や共産など日本の左派政党は、世界の世界標準の考えが理解できていない。

 安倍晋三首相は、この左派政党の弱点を見抜き、アベノミクスの中心に金融緩和をすえて、雇用を作るという成果を上げた。左派政党がアベノミクスを攻めるには、もっと強力な金融緩和を主張し、もっと早く雇用の確保を達成せよと言うべきであったが、全く方向違いだ。

 この点、一部のネットでいわれている黒田日銀の金融緩和は物足りないという批判の方が一理ある。だが、だからといって、黒田総裁の続投がおかしいとも思わない。

 金融政策の評価は単純だ。政策の目標は、物価の安定と雇用の確保であり、それぞれインフレ率と失業率で成果を計ることができる。

 物価の安定と雇用の確保という2つの目標について、インフレ率と失業率に逆相関があることを理解した上で、失業率を最低にし、インフレ率も最低にするのがベストである。

 日本の場合、下限とされる失業率(NAIRU=インフレを加速しない失業率)は2・5%程度であり、それに対応する最低のインフレ率は2%程度。この水準をインフレ目標としている。

 インフレ率について、黒田日銀スタート時の2013年4月はマイナス0・7%だったが、17年12月にはプラス1・0%になった。目標の2%まで、本来であれば、2・7ポイント改善すべきところが1・7%にとどまった。これは100点満点で評価すると60点である。

 失業率については、13年4月は4・1%だったが、17年12月には2・8%まで改善した。目標の2・5%まで1・6ポイント改善すべきだったが、1・3ポイントにとどまったので、これは80点である。

 インフレ率と失業率を合わせてみれば70点といえる。これは及第点だといえよう。

 本来なら、黒田日銀体制の3人(総裁と2人の副総裁)は留任となる。ただし、個別の事情による退任がある場合、財務省出身、日銀出身、学者出身という安定した現体制の3枠を維持した上で、微修正することとなったのだろう。

 つまり、日銀出身の中曽宏副総裁の後任としてやはり日銀出身の雨宮正佳氏、リフレ派学者の岩田規久男副総裁の後任として、これもリフレ派学者の若田部昌澄氏というわけだ。

 人事というものは対外的なメッセージになるが、世界から見て誤ったメッセージを送らないという意味で、政治的にも経済政策的にも堅実な人事であった。役所人事とは100点満点ではなく、継続性と安定性を求めるものである。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)