【日本の解き方】裁量労働の労働時間は計れるか、本人も「分からない」のが実情

 裁量労働をめぐる厚生労働省の不適切なデータが問題になっている。

 19日の衆議院予算委員会で加藤勝信厚労相は、平均的な残業時間について、一般労働者と裁量労働者で異なる基準で質問した不備を認め、謝罪した。

 筆者の経歴をいえば、役人時代の二十数年、民間の大学教授として十余年で、前者では労働基準法の適用除外(いわゆるホワイトカラーエグゼンプション)、後者では裁量労働である。

 厚労省は裁量労働について労働時間を調査したというが、一体どのような調査なのか興味深い。筆者の周りにいるかなりの人は裁量労働者であるので、試しに労働時間を聞いてみた。正直にいえば、筆者を含めて「よく分からない」だった。

 起きている間はすべて労働時間といえなくもない。講義時間だけとすると、明らかに違う。論文を1本書く時間と言われても分からない。アイデア自体はかなり前からあって頭の中でずーっと考えてきたものでも、実際の執筆にかけた時間はごく短いということもしばしばある。

 これは、多くが裁量労働者のマスコミ記者の事情も同じだろう。記事1本にかける時間も個人差があり、人それぞれなのではないか。

 こういう話をすると、「今は適法な裁量労働は少なく、違法な裁量労働が多い」という。どのようなデータに基づいたものなのかも興味深いが、違法な裁量労働であれば、労働基準監督署が取り締まるべき問題だ。

 野党は、裁量労働者の労働時間の再調査を要求しているが、適法な裁量労働者にとっても、答えようにも答えられない質問である。本人でも労働時間が分からないのが裁量労働者だ。

 筆者の役人時代は、労基法の適用除外であったので、振り返ってみると「労働時間」という概念が乏しい仕事ばかりだった。一応、出勤時間と退庁時間は管理されていたはずだが、自分で記録した記憶はない。月末になると、「ハンコを下さい」と総務係の人が来るのでその人が適当にやっていたのだろう。

 役人の仕事といえば、国会答弁の作成、法案作成や海外制度の調査などである。ともに原稿書きであるが、かかる時間は人それぞれだ。速く作る者がより優秀で、労働時間が多いことは問題だともいえる。労働時間が成果に結びつかない典型的な仕事だ。残業手当もあったが、実際の残業時間とは関係なく、課に配分された予算に応じて、管理者が適当に職員に配分していたようだ。

 現在では事情が違っているかもしれないが、現役の役人に聞いても、あまり変化はないようだ。

 厚労省は国会対応などが最近増加しているが、その一方で人員は従来通りなので1人あたりの業務量は増えているだろう。

 もしそれで裁量労働者の労働時間の調査などという意味のない仕事をしているというのなら、働き方改革を行うべきなのはまずは官僚ではないのか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)