金正恩氏の新たな商売「女子大生派遣ビジネス」の現場写真

遼寧省丹東のレストランでインターンとして働く北朝鮮の女子大生(画像:デイリーNK特別取材班)

 中国商務省は昨年9月、自国内の北朝鮮企業や合弁企業に対して今年1月8日までの閉鎖を命じた。国連安全保障理事会の制裁決議2375号に従ったものだ。

 これを受け、北朝鮮レストランとしては世界最大規模と言われた平壌高麗館(遼寧省丹東市)がひっそりと店を閉めるなど、かつては100店舗に及んだ中国国内の北朝鮮レストランの多くが閉鎖に追い込まれた。

 ところが、その後も中国国内のレストランで働く北朝鮮の女性従業員の姿が目撃されている。その裏には、北朝鮮当局による巧みな制裁逃れの術がある。その現場を、デイリーNKの特別取材班が取材した。

 中国遼寧省の丹東。北朝鮮との国境を流れる鴨緑江のほとりに立つあるレストランには、中朝両国の国旗が掲げられている。店頭に掲げられた案内によれば、同店の目玉は「平壌女性の歌と踊り」だ。どうやら、中国人が経営する「北朝鮮風」レストランのようだ。 店内では、若い中国人従業員に混じって北朝鮮女性が働いていた。

 取材班が「韓国から来た」と告げても、女性従業員は当惑の色を見せるどころか、嬉しそうな表情を浮かべた。そして、「南朝鮮(韓国)のお酒あります」「オリンピックはうまく行っていますか?」などと、自分から客に問いかけるフレンドリーさだった。

 さらに「ソウルに行ってみたいか」と質問してみると、「はい、行きたいです」と笑みを浮かべた。接客のプロとしての営業トークなのか、韓流好きな北朝鮮女性の本音なのか、取材班には見極めがつかなかった。一昨年、レストラン従業員の集団脱北が北朝鮮国内でも大問題になったことを思えば、彼女らの言葉はきわめて大胆なものにも思える。

 彼女たちは中国語も非常に流暢だ。仕事を終えた後、毎日30分間は勉強しているという。休日は月に1日だけで、自由に外出することもできなければ、服装も決められている。携帯電話を使えるかたずねたところ「平壌の家にはありますが、ここでは使ってはならないことになっています」との答えだった。ただし、手紙のやり取りに制限はないため、家族が恋しくなるたびに両親に手紙を出すという。

 彼女らの正体は、張鉄久(チャン・チョルグ)平壌商業総合大学の学生たちだ。

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 張鉄久とは、故金日成主席の抗日パルチザン時代の炊事兵だった人物で、その名を冠した大学は、レストランやホテルなど観光分野で働く人材の養成機関となっている。

 (参考記事:20代美人ウェイトレスを直撃…「北朝鮮レストラン」の舞台裏

 卒業後は外国人が利用する高級ホテルやレストランに配属され、海外に派遣されるチャンスもあることから、北朝鮮女性の間で非常に人気が高い大学であるとされる。

 同大学では、2年間の教育を受けた後に、中国のレストランで2年間働くインターン制度を2014年から実施している。

 韓国の中央日報は2016年4月、上海の北朝鮮レストラン・清流館でこの大学の女子学生がインターンとして働いていると報じている。同店は、朴槿恵政権(当時)が2016年2月、韓国国民に向けて北朝鮮レストランの利用自粛を呼びかけるまでは、上海を訪れる韓国人観光客の定番コースだった。

 (参考記事:美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発

 中央日報によれば、同店の女性従業員らは韓国人客とも積極的に交わろうとし、お土産用のトゥルチュク(クロマメノキ)酒を熱心に売り込み、韓国ウォンも受け取るなど、他の北朝鮮レストランの従業員たちとはだいぶ趣が異なっていたという。

 国連安保理の制裁決議は加盟国に対し、北朝鮮労働者の受け入れを禁じ、今いる労働者も2年以内に帰国させることを義務付けているのに、なぜ彼女らは働き続けられるのだろうか。

 中国の労働法は、学生との雇用契約は認めていない。つまり、学生のバイトやインターンは、労働法の保護の対象となる労働者とは定義されないのだ。つまりは法律の盲点をつき、労働者とは認められない女子大生を派遣して、制裁破りを行っているのだ。

 さらにレストラン経営者は、中国の法定労働時間(1日8時間以下)、残業時間(通常は1日1時間、特別な事情があった場合でも3時間以下)、最低賃金(丹東市では1420元、約2万4000円)を守らなくても罰せられない可能性がある。

 実際、彼女らは朝9時から夜9時半までの長時間労働を強いられているが、給料はほとんどもらえないという。現地の情報筋によると、レストランの中国人オーナーは従業員1人あたり毎月500ドル(約5万4000円)を支給しているが、そのおカネは学生ではなく大学の責任者に手渡される。彼女らは、期間満了後にわずかばかりの外貨を受け取るだけだ。

 このようなインターン制度を利用した北朝鮮の制裁逃れと、それに伴う人権侵害に対して、中国政府がどのように対応するか注目される。

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