北の木造船、狙いは日本入国実験か 専門家が警鐘「意図を持って送り込まれた人がいるのでは」

秋田県由利本荘市に漂着した木造船。山田教授は北朝鮮の狙いを分析した

 日本海沿岸に相次いだ北朝鮮籍の木造船漂着をめぐり、新たな疑惑が浮上した。一部の漂着船が漁業とは別の目的で日本に向かった疑いがあると専門家は指摘、朝鮮半島有事をにらみ、実験的に日本に入国しようとした可能性もあるという。最近も漂着事案は収まっていない。日本の海の備えは大丈夫なのか。

 「おそらく大半は無理やり沖に出された漁民だと思われるが、そのなかには日本に流れ着くことを目的にした人がいるのではないか」

 拉致問題を調べている「特定失踪者問題調査会」が立ち上げた「『その後』プロジェクト」の会合で、東海大海洋学部の山田吉彦教授がこう疑問を投げ掛けた。

 プロジェクトは金正恩(キム・ジョンウン)体制崩壊後に起こり得る問題について考えることを目的としており、北朝鮮籍の漂流船も重要なテーマとなった。

 日本に漂流することを目的にした船がいるのではないかという山田氏の疑問は、いくつかの不可解な点から導き出されている。

 山田氏がまず挙げたのは、コスト面だ。山田氏の試算では、好漁場として知られる大和堆(やまとたい)にイカを獲りに来る燃料代よりも、イカの売却価格は低い。「人件費がかからず、燃料代を気にしないとなると、軍が関与していない限り漁業はできない」と山田氏は話す。

 昨年11月23日に秋田県由利本荘市に北朝鮮船籍の漁船が流れ着き、船員が上陸した事案では、船は10月初旬、北朝鮮北東部の清津(チョンジン)港から出港、エンジン故障のため漂流し、由利本荘に着いたとされる。

 しかし、その間、2度にわたって日本海が荒れており、山田氏は「エンジンが壊れている船が耐えられるような波ではなかった。すでに沿岸の一部に潜んでいたのではないかと考えられる」と推測した。

 由利本荘の漂着ではもう一つ、不可思議な点があった。船は、船舶係留施設「本荘マリーナ」に漂着していたが、「あの港の構造から考えて、エンジンの壊れた船が防波堤の隙間を縫って着岸するというようなことはなかなか考えられない」(山田氏)。

 昨年来の相次ぐ漂流では、過去と比べると形状を残したままの船が流れ着き、生存者も多かった。山田氏は「昨年は実験的に日本に船を送り出していたのではないか。意図を持って送り込まれた人たちが一部いるのでは」と話し、警鐘を鳴らした。

 北海道松前町の松前小島に漂着した事案では、漁業者向けの避難小屋から発電機やテレビなどが盗まれる被害があった。

 日本の海上警備は大丈夫なのか。

 山田氏は「海上保安庁の限界は超えている。警察とのすみ分けに加え、上陸した場合のことも考えると自衛隊の活用も含めて考えないといけない。国民の協力を得るため、情報をちゃんと流していかないといけない」と指摘した。

 日本は抜本的に、海の守りを見直す必要がありそうだ。