【ニュースの核心】トランプ氏「手荒な結果になるだろう」軍事攻撃の決断か 足並みそろえる日米豪、韓国は…

トランプ大統領(右)は、ターンブル豪首相との共同会見で、北朝鮮に「最後通告」を発した =23日、ワシントン(ロイター)

 ドナルド・トランプ米政権が23日、北朝鮮に対して「過去最大規模」の経済制裁を発表した。その直後、トランプ大統領は、これまでになく踏み込んだ発言をした。

 トランプ氏は記者会見で「もしも制裁が効かないなら、われわれは第2段階に進まなければならない。それは非常に手荒な(rough)、そして、世界にとって不幸な(unfortunate)結果になるだろう」と言い切ったのだ。これは「軍事攻撃に踏み切る」と言ったのも同然ではないか。

 会見には、オーストラリアのマルコム・ターンブル首相が同席していた。興味深いのは、ターンブル氏には、大統領発言に驚いた様子がまったく見られなかった点である。これは映像で確認できる。

 トランプ氏は「もし取引が成立しないなら、何かが起こらざるを得ない」と述べて、攻撃が不可避であるのを強くにじませているのに、ターンブル氏は表情一つ変えず、記者団の反応をじっと見ていた。事前にトランプ氏の決意を承知していたに違いない。

 2人の会見は事実上、「トランプ政権が北朝鮮に対する軍事攻撃を織り込んだ」ことを世界に表明した。私は映像を見て、そう受け止めた。

 トランプ政権が打ち出した制裁は、国連安全保障理事会決議に違反して海上での積み荷移し替えなどをしていた海運・貿易会社27社と船舶28隻、1個人を対象に米企業との取引を禁じている。

 国連決議による制裁は10回を数える。安保理の下では限界までやり尽くしたので、米国が単独で最後の制裁に出た形だ。そのうえで、「次は手荒な措置になる」と言ったのだから、これは「米国による最後通告」とみるべきだ。

 トランプ発言は北朝鮮に相当、効いたようだ。

 平昌(ピョンチャン)五輪閉会式に出席するために訪韓した金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長は25日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との会談で米国との対話に「十分な用意がある」と述べた。北朝鮮側から、米朝対話を求めるサインが出たのは初めてだ。

 だが、私はこれも先の南北首脳会談提案と同じく「時間稼ぎ」とみる。米国との対話というカードをチラつかせて、あと少しの時間さえ手に入れれば、「核とミサイル」が完成し、「形勢は一挙に北朝鮮が有利になる」という計算に基づいている。

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が直ちに「核とミサイルを断念し、査察を受け入れる」と声明でも出せば別だが、トランプ政権は悠長な対話交渉には応じないだろう。むしろ、さらなる圧力強化に動く可能性が高い。それで北朝鮮がこらえきれず、挑発行動に出れば、絶好の攻撃の理由にもなるからだ。

 トランプ氏は五輪開会式の後、日本の安倍晋三首相と75分間にわたる電話首脳会談をして今回、ターンブル氏とも腹合わせした。日米豪は軍事強硬路線で完全に足並みをそろえたとみていい。

 残るは韓国だけだ。トランプ氏は五輪閉会式に長女のイバンカ大統領補佐官を送り込んだ。

 イバンカ氏と文氏の会談内容は非公表なので推測するしかないが、イバンカ氏は「韓国は日米豪の側に立つのか? それとも、北朝鮮と連携するのか?」と厳しく問い詰めたはずだ。

 イバンカ・文会談は「韓国への最後通告」でもある。時間切れは迫っている。 

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。東京新聞論説委員。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革推進会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『ケント&幸洋の大放言!』(ビジネス社)がある。