【日本の解き方】米国で銃規制が進まないワケ 規制望む声の一方で連邦政府拒否するねじれ現象

 米フロリダ州の高校で銃乱射事件があり、あらためて銃規制問題が浮上している。米国で銃規制を徹底できない歴史的、政治的背景はどうなっているのか。

 日本のように、銃保有率と殺人率がゼロに近いと、銃規制が合理的・説得的になる。ところが、世界を見ると、銃保有と殺人率には明確な相関があるとは言いがたい。

 実際に世界169カ国の銃保有率と殺人率の相関をとると、ほぼ無相関だ。例えば、米国の銃保有率は人口100人あたり100丁程度と世界中で1番高いが、殺人率は人口10万人あたり5件程度と世界平均の7件程度と比べてそれほど高いとはいえない。スイスの銃保有率は人口100人あたり25丁程度と高いが、殺人率は人口10万人あたり1件に満たない程度と、日本と並んで低い国だ。

 となると、米国では銃規制によって得られるメリットとデメリットという議論になってしまう。そこで必ず登場するのが米国の成り立ち、歴史である。

 米国では建国当初から、警察は圧政の手段であるとされ、連邦警察を整備して秩序維持をするという考え方はない。特に地方の農村部では、警察ではなく、住民による自警団が作られた。そこで自警団の秩序維持活動に不可欠だったのが銃だ。

 それは、米国の憲法によく表れている。憲法修正第2条では、「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない」とされている。人民の武装権である。憲法に基本的人権として規定されている。

 日本人から見れば、民兵が規定されていることが興味深い。民兵は圧政から人民を守るものなのだ。このため、米国では、銃規制が望ましいと考える人が多いが、それを連邦政府が法律で規定することには反対する人が多くなるという、一種のねじれ現象が起きる。

 いずれにしても、米国で銃規制をするためには、憲法改正が必要になるので、連邦政府が銃規制の法律を作るべきではないという米国人の感情とともに、かなりハードルが高くなってしまう。

 しかも、現実問題として、人口密集地域でない農村部では、警察を呼んでも時間がかかるために、銃によって自警する必要があるという話はかなり説得力を持つ。

 銃乱射事件があり、銃規制が叫ばれるたびに、銃規制の前に駆け込みで銃を購入する動きがあるが、それは米国人の銃規制への嫌悪を表す一面といえるだろう。

 そうした米国人がかなりの数いるので、銃規制反対の活動をする全米ライフル協会(NRA)などの政治団体も支持を得ている。

 共和党は銃保有率が高く殺人率が低い農村部、民主党は銃保有率が低く殺人率が高い都市部を支持基盤とする。民主党が強硬な銃規制を主張しても説得力に欠けるため、最後はこれまでのように、人民の武装権を認めた上で、一部の銃規制強化という結末になりそうだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)