【日本の解き方】ベネズエラ仮想通貨発行の是非 背景に経済苦境や米の制裁、まともな国ならメリットも

 ベネズエラが国として仮想通貨の発行を始める。石油埋蔵を裏付けとした「ペトロ」に続き、金を裏付けとして「ペトロゴールド」を発行するという。国家が仮想通貨を発行することの是非について考えてみたい。

 まず、発行体であるベネズエラはどういう国か。原油埋蔵量が多く、石油依存経済だったが、1980年代までは裕福な国だった。

 80年代中頃からの原油価格の下落によって経済は低迷した。90年代から慢性的なインフレで、ここ25年間の平均インフレ率は30%以上である。この25年間で物価は700倍以上となっており、その分、ベネズエラ通貨のボリバルは価値が下落してきた。

 最近のインフレはかなりひどく、統計も信用できない。ちなみに、中央銀行は2016年からインフレ率の公表を停止している。ベネズエラ国会が独自に調査したものによれば、17年のインフレ率は2616%になっている。ある経済メディアでは、独自のインフレ指標を設け、最近12週間で718%上昇、年率換算で年率44万%を超えていると報じている。

 1990年代からの社会主義政策は、原油価格の下落とともに、経済活動を硬直化させ、杜撰な政府の経済運営を招いた。この惨状は、91年に崩壊したソ連をみているようだ。ソ連も石油輸出で経済運営をしていたが、社会主義体制によって石油をあてにして、社会主義体制で硬直的な歳出増を繰り返していた。ところが、80年代中頃からの原油価格の低下にあって、財政事情が急速に悪化した。そのとき、市場主義経済でない社会主義の統制経済はもろかった。それがソ連崩壊の引き金だった。

 ベネズエラもソ連と全く同じ道をたどっている。石油依存でありながら、社会主義体制の下で経済が脆弱化しているのだ。そして、インフレ目標もない金融政策では、マネーを刷って財政収入に充てているが、ハイパーインフレとなって、経済の悪循環を招いている。

 今や、国際会計基準によるハイパーインフレの年率30%程度ではなく、経済学の定義によるハイパーインフレである月率50%、年率1万%のインフレにも近づいているとも言われている。

 この経済学でのハイパーインフレは、世界史上まだ56例しかなく、その半数が共産主義体制の崩壊に伴っている。旧ソ連を構成していた15共和国のほとんどでソ連崩壊時にハイパーインフレを経験した。

 その経済苦境は、米国による経済制裁で加速されている。マドゥロ政権の圧政と独裁を非難したものだが、ベネズエラ政府が新たに発行する国債や国営石油会社の債券などについて、米国民による取引を禁じる内容だ。そのような国の発行する仮想通貨は、新たな国際金融詐欺といわれかねない。

 仮想通貨は、資金トレースに優れており、資金取引コストも低くできる可能性がある。その技術を生かすには、まともな国で発行すれば、メリットがあるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)