『慰安婦虐殺記録』に大疑義 「新発見ではない」ジャーナリスト・石井孝明氏緊急寄稿

日本大使館前に残る慰安婦像

 慰安婦問題では、ソウル市も2月27日、旧日本軍が慰安婦を虐殺したという映像や写真、文書を、米国立公文書館で発見したと公表した。韓国メディアなどが報じたが、これには大きな疑義がある。安全保障や戦史について研究・執筆するジャーナリスト、石井孝明氏が緊急寄稿した。

 問題の資料は、ソウル市とソウル大人権センターとの共同調査で見つけたといい、太平洋戦争中の1944年、中国南部雲南省・騰越(現・騰衝市)の記録だという。

 ネットで公開された約20秒の映像や写真を見ると、遺体の埋葬光景だ。写真は、女性のためのアジア平和国民基金が発行した『「慰安婦」問題調査報告・1999』内の論稿「雲南・ビルマ最前線における慰安婦達-死者は語る」で紹介されており、新発見ではない。

 同稿によると、写真説明には「(遺体の)大半は日本軍基地にいた朝鮮人女性たち」と書いてあったそうだ。中国国民党軍に同行した米軍人が撮影したもので、正確な情報とは思えない。

 44年6月から9月、雲南省と北ビルマ(現・ミャンマー北部)の国境付近で、米軍に指導された中国国民党軍と、日本軍が激突した。この戦いで、米軍式装備をした約30万人の中国国民党軍は、2、3万人の日本軍を圧倒。日本軍は拉孟と騰越の2都市で、陸軍第56師団(福岡県久留米市)の一部が玉砕した。

 日本軍側の資料には、朝鮮人慰安婦を殺害した記録はない。前出の調査報告によると、ここで慰安婦18人(=台湾人3人、朝鮮人2人、残りは日本人)が、中国国民党軍の捕虜となっている。これは日本軍が慰安婦を組織的に殺害していない証拠となるだろう。

 北ビルマで戦った陸軍第33軍の参謀、野口省己少佐は手記『回想ビルマ作戦』(光人社)を残している。同著によると、「慰安婦約20人が拉孟で死亡したもよう」という報告に、同軍作戦参謀の辻政信大佐は衝撃を受け、慰安婦などの民間人を後方に下げるよう、反対を抑えて実行した。

 辻は戦史に頻繁に登場する有名な軍人で、有能さの半面、捕虜への残虐行為でも知られる。その彼でも慰安婦を虐殺する発想はなかった。日本軍にその動機はない。

 朝鮮人慰安婦は、戦場近くで戦闘に巻き込まれて亡くなった可能性がある。哀悼の念を示したいが、虐殺の証拠はない。

 ソウル市の記録公表は、騰越の戦いでの日本軍戦死者約2800人や、ビルマ戦線の戦死者約16万4500人の「名誉の問題」に直結する。日本政府は実態を調査して、同市に発表の疑義を指摘すべきだ。