【突破する日本】高まる自衛隊の存在意義 抑止力高めるため不可欠な憲法上の正統性付与

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 自民党の憲法改正推進本部が、党所属の国会議員に「憲法9条改正の条文案」を募ったところ、100人以上が約120案を寄せたという(朝日新聞2月27日付)。まさに百家争鳴状態だ。25日の党大会までに党改憲案の取りまとめを目指す方針という。

 自衛隊を憲法に明記することの意義は、自衛隊を法律で廃止できる脆弱(ぜいじゃく)な法的地位から、憲法改正をもってしなければ廃止できない強固な法的地位に格上げすることにある。自民党の議員各位には持論は持論としながら、自衛隊明記の意義を理解し、賢明な対応をしてほしい。

 憲法改正、とりわけ9条に関わる部分の「改正が必要である理由」は言うまでもない。

 1つは、現行憲法の制定と、その後の警察予備隊・保安隊・自衛隊創設に関する歴史的な経緯によるものだ。GHQ(連合国軍総司令部)は懲罰的な意味で日本の非武装を想定して、「戦力」の不保持(9条2項)を押し付けた。現場責任者だったチャールズ・ケーディスは原案起草の最大の目的は「日本を永久に非武装のままにすることだった」と回想している。

 しかし、その後、朝鮮戦争が勃発し、「再軍備」に政策転換する。警察予備隊の創設だが、以後、9条2項との矛盾が指摘されるようになった。

 日本政府は9条2項と矛盾しないよう、自衛隊を「戦力」のレベルに達しない「必要最小限の実力組織」として合憲性を主張してきたが、憲法に明記しない存在として放置してきた。それを憲法上の組織とし、正統性を付与する意義は大きい。

 憲法明記には憲法改正が必要であり、国民投票を行う。国民投票で承認されれば、自衛隊はわが国の正統な防衛組織と認められることになる。「国民の自衛隊」となるのだ。国民投票は自衛隊を認めるか否かを問うものともなる。

 憲法改正が必要なもう1つの理由は、わが国を取り巻く安全保障環境が緊迫化していることにある。北朝鮮は核兵器開発を断念せず、脅威は高まっている。巧みな「微笑外交」で韓国を取り込んでいる。中国は海洋進出に意欲を示し、沖縄県の尖閣諸島付近への公船派遣に加えて、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡に艦艇を航行させることが常態化している。

 日本政府は牽制(けんせい)のために沖縄本島に地対艦誘導弾(SSM)の部隊を配備する方向での本格的な検討に入った。2月27日には中国の軍用機が対馬付近の日本の防空識別圏にも侵入している。自衛隊の存在意義は日増しに高まっている。憲法上の正統性付与は抑止力を高めるために不可欠の措置といえる。

 ■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士課程中退。専攻は憲法学、思想史、国家論、人権論。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。教育再生実行会議委員、法制審議会民法(相続関係)部会委員、フジテレビジョン番組審議委員、日本教育再生機構理事長など。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)、『公教育再生』(PHP研究所)など多数。