【突破する日本】「自衛隊廃止」狙う左派勢力、「力の空白」に入り込む中国と北朝鮮

旧社会党本部(東京・永田町)

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 かつて、わが国には「非武装中立論」という考え方があった。冷戦時代に日本社会党などが唱えていたものだ。「自衛隊の廃止」と「日米安全保障条約」の解消を内容とし、在日米軍の存在も否定する。が、文字通りの「非武装」や「中立」を求めるものではない。ソ連が侵攻しやすいように日本国内を非武装にし、日米同盟を解消するというもので、社会主義政権誕生の暁には軍備を持つとした。

 社会主義協会の理論的指導者、向坂逸郎は「日本が社会主義国家になれば、帝国主義と戦い社会主義を守るために軍備を持つのは当然」と語っていた(『諸君!』1977年7月号)。

 現在は、表向きに非武装中立論を唱える者は少ない。しかし、自衛隊を憲法に明記する程度の憲法改正にも反対する勢力は、非武装中立論の係累につながっている。

 社会党など革新勢力を支持していたとみられる朝日新聞は、自衛隊の憲法明記に執拗(しつよう)に反対する3月1日付の社説でも、自民党が安倍晋三首相の提唱した9条2項を維持する自衛隊明記案で議論を集約する構えであることを、《そもそも何のための改憲なのか。肝心のそこが分からない》《改憲の必要はない》《自民党の改憲論議におよそ理はない》とこき下ろしている。

 だが、あえて分かろうとしていないのではないか。

 繰り返し言うが、現状では自衛隊は法律で廃止できる程度の存在だ。憲法に明記すれば、廃止には憲法改正を必要とする存在となる。法的根拠が格段に強固になるのだ。

 左派勢力は、自衛隊を法律で廃止できる程度の存在として放置し、いつの日にか廃止を企図しているようにしか思えない。

 「平和」は力と力がぶつかって生じるバランスの上に成り立つとするのが、安全保障の「リアリズム学派」の考え方だ。自衛隊を脆弱(ぜいじゃく)な法的根拠に立たせ続けることで生じる「力の空白」には、かつてはソ連、現在では中国や北朝鮮が入り込み、わが国の「平和」は脅かされる。「平和」を維持するための抑止力を高めるには自衛隊の憲法明記は不可欠なのだ。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(2月27日付)は、シリアのアサド政権が反政府勢力弾圧に使っている化学兵器は北朝鮮からもたらされたものと国連が認識していると報じた。これが米国の北朝鮮への軍事攻撃の口実になるとの見方もある。「より大きな悪」を避けるための措置だ。

 その際、自衛隊は米軍を傍観できない。同盟国として後方支援は不可欠だ。犠牲の可能性もある。憲法明記は自衛隊に名誉を付与することでもある。いや応なく、国民にも見識が問われることになる。=おわり

 ■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士課程中退。専攻は憲法学、思想史、国家論、人権論。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。教育再生実行会議委員、法制審議会民法(相続関係)部会委員、フジテレビジョン番組審議委員、日本教育再生機構理事長など。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)、『公教育再生』(PHP研究所)など多数。