【日本の解き方】米国が憤るシリアと北朝鮮、サリン使用めぐり共犯関係 「核拡散ドミノ」に強い懸念

 北朝鮮がシリアに対し、化学兵器の製造に使える材料を輸出していたことが国連の報告書で明らかになった。シリアと北朝鮮の関係や、北朝鮮がさらに核・ミサイル開発を進めることの危険性について考えてみたい。

 北朝鮮とシリアの国交樹立は1966年と古い。73年の第4次中東戦争を機に軍事交流もある。90年代には、北朝鮮は化学兵器をシリアに販売、サリン製造施設の支援もしている。2000年代も反米的なアサド政権と友好関係を維持している。北朝鮮とシリアは、相互に大使館を置いている。シリアは北朝鮮との友好関係があるので、韓国とは国交を結んでいない。

 そもそも、米国と北朝鮮との緊張関係は、昨年4月、米中首脳の夕食会の最中に、米軍が行ったシリア空軍基地へのミサイル攻撃が一つの契機になっている。

 このミサイル攻撃は、シリア政府軍が自国内の反政府勢力に対して、化学兵器サリンを使ったためといわれていたが、このサリン攻撃が実は北朝鮮によるものという見方は当時からあった。北朝鮮とシリアは切っても切れない関係なので、北朝鮮を警告するために、米国はシリアをミサイル攻撃したわけだ。

 今回の国連の報告書は、そうした北朝鮮とシリアの共犯関係をあぶり出すものと考えたほうがいい。

 シリアは13年に化学兵器禁止条約に加盟して、約1300トンを申告して廃棄した。しかし、サリンを隠し持っていて、それを使ったのだろう。サリンは長期保存は難しいが、北朝鮮の技術、原料供給などによって使用に至ったというのが国際的常識である。そして、シリアのサリン使用は、それまでの米オバマ政権の弱腰も要因の一つとなったといえるだろう。

 この点、オバマ政権とは違うことを見せて大統領に就任したトランプ氏にとって、シリア問題は格好のアピール材料になる。それが、昨年4月のシリアへのミサイル攻撃である。このミサイル攻撃の命中率は驚異的に高く、ほぼ百発百中であった。同席していた習近平主席も驚き、北朝鮮も腰を抜かしたことだろう。

 しかし、その後、北朝鮮は、この米国の警告を無視して、核・ミサイル開発を進めた。

 米国が恐れているのは、米国本土への攻撃とともに核拡散である。これは、今の核不拡散体制への挑戦であり、核不拡散を守るという大義名分は、北朝鮮問題の鍵を握る中国やロシアにも有効である。

 さらに、現実的な懸念として、中東のイラン、シリアへ核が拡散すれば、それこそ中東は各国が核を持つ「核ドミノ」が避けられなくなる。

 北朝鮮がシリアに化学兵器を輸出していたということは、核・ミサイルでも同じことが起こるというわけだ。北朝鮮に対する米国の軍事オプションは、本コラムで繰り返しているように、公算が高まりつつある。2月23日に発表された北朝鮮への経済制裁とともに、また一つ外堀が埋まった感じがする。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)