【忘れない、立ち止まらない 東日本大震災から7年】生活再建を妨げる「法律の壁」 復興“スピード感”失速、制度見直し柔軟な運用を

被災者の住まいである災害公営住宅。通常の公営住宅法とは別の法整備も求められる(東海新報社提供)

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 被災自治体の復興は、「土地区画整理事業」と「防災集団移転促進事業」という2つの手法によって進められてきた。だが、首長やまちづくりに携わる人々の間からはしばしば、「制度内容が、被災地の実情に即していない」という声がため息交じりに、あるいは憤りとともに聞こえてきていた。

 特に区画整理については、これほど広範囲に及ぶ災害を想定した制度にはなっておらず、復興の“スピード感”を失速させてしまったといえる。

 岩手県陸前高田市の場合、宅地造成が2021年(=何と、発災から丸10年だ)までもつれこむことになった一因は、工事着手に必要な「起工承諾」を、何千もいる地権者“全員”から得ることが、法律上必須だったことにある。

 この事務作業だけで、まず数年を要した。たとえ100人中99人が承諾しても、最後の1人が死亡していたり所在不明となれば、手続きが滞り、工事は一歩も進めることができない。被災市町から国に対し、幾度も「緊急時こそ逸脱した制度運用を」と悲痛な叫びが上がったものの、「公平性」の名のもとにその訴えは退けられてきた。そうする間にも住民が流出し、地域衰退に拍車がかかった。

 最近では、災害公営住宅の家賃に関しても、平時の法律が復興を妨げる事態が持ち上がっている。被災者の生活再建のため建てられた住宅団地でありながら、あくまで通常の「公営住宅法」に縛られる災害公住は、入居3年を過ぎると減免措置がなくなり、一部世帯の家賃が急激に上昇するのだ。

 本来の公営住宅は、住宅困窮者向けに低廉な家賃で住まいを提供するもの。このため、家賃算定に必要な世帯収入の超過基準は15万8000円と低めに設定されている。

 災害公住でもこの基準額は変わらず、共働きならすぐ「収入超過」認定されてしまう。すると入居当初3万円程度だった家賃が、4年目以降は8万円近くまで跳ね上がる。この高騰に耐えられず退去を選んだ被災者が出始めたため、岩手県は今年新たな減免措置を講じたが、「公平性の観点から」既存の枠を逸脱するような措置にはならなかった。

 月額16万円を下回る収入で家賃がその半分を占めたら、働き盛りの若い世代などほとんど住むことはできず、入居構成は高齢者らに偏っていく。自治活動の停滞が起こり、コミュニティーの崩壊が始まる。行きつくのは、そうした住宅団地が地域内にいくつも点在する未来だ。

 あと数年でハードの復旧が終わっても、そこに人が住まなければ「まち」にはならない。大規模災害は必ずまた起きる。いま被災自治体が直面する課題を踏まえて制度を見直し、柔軟な運用をできるようにすべきである。

 ■鈴木英里(すずき・えり) 1979年、岩手県生まれ。立教大卒。東京の出版社勤務ののち、2007年、岩手県大船渡市・陸前高田市・住田町を販売エリアとする地域紙「東海新報」社に入社。現在は記者として、被害の甚大だった陸前高田市を担当する。