合意「対話」意向も…核開発“南北共犯”か、世界裏切り続けた北の歴史 正恩氏が北主導「統一指令」情報も

韓国の鄭義溶国家安保室長(左)と握手する金正恩氏(韓国大統領府提供・共同)

 北朝鮮が狡猾なカードを切ってきた。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の南北首脳会談を4月末に行い、米国とは「非核化」と「米朝関係正常化」に向けた対話の意向を示したのだ。ただ、これまで北朝鮮は世界を裏切り続けてきた。南北の合意内容にも、前提条件が付けられている。残り数カ月とされる「核・ミサイル開発」の時間稼ぎに、韓国が加担しているのか。正恩氏が1月、北主導による「南北統一」の極秘指令を発したとの情報もある。警戒を強める日米政府。国際社会は詐欺国家にだまされてはならない。

 「北朝鮮との対話で前進があった可能性がある。世界は見ている、そして待っている! 偽りの希望かもしれないが、米国はいずれの路線であれ、全力で取り組む用意がある」

 ドナルド・トランプ米大統領は6日、ツイッターにこう投稿した。朝鮮半島の非核化に向けた北朝鮮との対話に期待を示しながらも、本気で非核化に取り組む意思があるのかを、訝しむ内容だった。

 米情報当局者は北朝鮮に不信感をにじませている。

 6日に開かれた上院軍事委員会の公聴会で、ダン・コーツ国家情報長官は「北朝鮮が核放棄に応じることを示す兆候はない」と述べ、ロバート・アシュリー国防情報局長も「(北朝鮮に)核・ミサイル開発を停止する意向はない」と断言した。

 北朝鮮に対する米国の懐疑的な姿勢を示すかのように、マイク・ペンス副大統領は6日の声明で、「金正恩政権の核開発を終わらせるため、米国と同盟国は最大限の圧力を加え続ける」と表明した。

 それだけ、韓国と北朝鮮の合意内容は現実と乖離(かいり)している。

 5、6日に北朝鮮を訪れた韓国政府の特使団が発表した内容は、(1)4月末に板門店(パンムンジョム)で南北首脳会談開催(2)北朝鮮は対話期間中の核・ミサイル実験を凍結(3)北朝鮮は非核化のための対話を米国と行う用意がある(4)正恩氏は4月からの米韓合同軍事演習を例年通りに行うことを「理解する」と表明(5)北朝鮮が、体制の安全が保証されれば核を保有する理由がないと表明-などだった。

 この通りに事態が進めば望ましいが、巧妙な前提条件も付けられている。例えば、注目の「非核化」には「北朝鮮に対する軍事的脅威が解消されれば」とあり、それまでは核開発を続ける意思を示した。

 現実の動きも異なっている。

 米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」が5日発表した商業衛星写真に基づく分析によると、北朝鮮・寧辺(ニョンビョン)の核施設にある黒鉛減速炉(5メガワット)が稼働を続けている形跡があることが判明した。稼働継続が事実であれば、核兵器製造用のプルトニウムの生産を再開した可能性がある。

 歴史を振り返っても、北朝鮮が核放棄に応じる可能性は限りなく少ない。

 1994年の「米朝枠組み合意」では、北朝鮮の核開発凍結の見返りとして、軽水炉の建設や年間50万トンの重油提供が盛り込まれた。だが、北朝鮮は秘密裏に核開発を続けた。

 核問題をめぐる6カ国協議も、北朝鮮に振り回されるだけの結果に終わっている。2005年9月には核放棄を確約し、07年2月には核関連施設を停止・封印することで合意したが、その後も北朝鮮は核実験を重ね、脅威を高めてきた。

 「従北」の韓国・文政権を利用し、融和ムードを作り出した北朝鮮だが、裏ではさらに世界を危険に陥れるという情報がある。

 北朝鮮に詳しい麗澤大学の西岡力客員教授はこう明らかにする。

 「1月に正恩氏が『青瓦台(韓国大統領府)をはじめ、韓国の各機関は主体思想派が全部握った。(南北)統一をせよ』と指令を出したという話を北朝鮮につながる関係者から聞いた。核放棄をごまかし、北朝鮮が南北統一を進める恐れがある。南北首脳会談で南北が話し合いをしているなら、『北朝鮮は戦争しないのだから、米軍が駐留する必要はない』と韓国国民も考えるようになる。そして、在韓米軍を撤退させた後、韓国との連邦制国家を作るというシナリオを正恩氏は描いているのかもしれない」

 北朝鮮主導で、核を持つ巨大な「反日朝鮮国家」が誕生するのか。

 安倍晋三首相は日本時間6日夜(米東部時間6日朝)、北朝鮮の動きに対し、「当面は圧力を高めつつ、各国と連携して状況を見極める」との方針を、訪米中の河井克行自民党総裁外交特別補佐に伝えた。河井氏が記者団に明らかにした。

 安倍首相は「対北朝鮮制裁が効果を上げているからこそ、対話の流れになった」「(北朝鮮が)完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を確約しなければならないとも言及したという。

 日米をはじめとする世界は、どう北朝鮮に対峙(たいじ)すべきか。

 前出の西岡氏は「『不可逆的で検証可能な形での非核化を進める』という方針を絶対に降ろしてはならない。交渉には応じるが、交渉での要求は下げず、北朝鮮が要求を受け入れない限り圧力を緩めないことが必要だ」と指摘した。