【有本香の以毒制毒】豊洲開場まで迷走2年…小池都知事の罪、仲卸業者5店舗が築地居座り

豊洲市場が開場し、おどける小池都知事。問題は山積しているのだが… (ロイター)

 「日本の台所」と呼ばれた東京・築地市場(中央区)から移転した「豊洲市場」(江東区)が11日午前0時、開場した。小池百合子知事が安全性への懸念などを理由に移転延期を表明したため、当初より約2年も遅れた。同日早朝からは、初めての競りが行われた。開場の遅延は、2020年東京五輪や、莫大(ばくだい)な整備費の返済などに重い課題を背負わせている。移転問題に詳しい、ジャーナリストの有本香氏が人気連載「以毒制毒」で核心に迫った。

 豊洲市場が開場した。小池都政の迷走で約2年の遅れが出たものの、30年近くを費やした移転事業がようやく完了し、500余の場内業者が新天地での営業をスタートさせた。このことにまずお祝いを申し上げ、市場の繁盛を心からお祈りしたく思う。

 にぎわう豊洲と対照的に、ガランとした築地市場をのぞいてみると、施設の古さが一層目立つ。「この建物も見納めか」と皆が思っていた10日、築地取り壊しに「待った」をかけたい人々から声があがった。5店舗の仲卸業者らが会見を開き、「11日以降も築地で営業を続ける」と宣言したのだ。

 昨年上梓した拙著『「小池劇場」が日本を滅ぼす』(幻冬舎)の中で、私はこの事態を予想していた。居座る業者が出て、最終的に行政代執行により排除するという事態を、都の職員らは最も避けたかったはずだ。

 約30年前、神田市場が大田市場へ移転した際に踏んだ轍(てつ)を二度と踏むまいとの反省から、豊洲への移転事業は築地の全業者の「合意」が必須とし進められてきた。

 難儀な「合意」がやっと成り、移転まで2カ月余に迫ったときに、小池都知事が「ちゃぶ台返し」をしたのだ。今般の5店舗の「反乱」を小池氏はどう収めるのか。

 問題は他にも多くある。

 第1は、再々指摘してきた環状2号線の開通遅延だ。築地市場跡地を充てる予定だった東京五輪用車両約3000台分の駐車場も間に合わないため、五輪大会期間中の渋滞と混乱は避けられないだろう。

 第2の問題は、移転の費用と資金計画だ。

 昨年夏の東京都議選の際、小池氏は「築地を守る、豊洲を活かす」という妙なキャッチフレーズで有権者をけむに巻き、大勝した。街頭演説では「豊洲市場の建設に6000億円もかかるんですよ!」と叫び、あたかも前任者らが「税金を無駄遣いした」かのように多くの有権者をミスリードしたのだが、その費用を実際いかに工面するのか。

 もともと、建設費を含む移転費用の不足分は、築地跡地の売却で賄う計画だった。これも小池氏がひっくり返したのだが、不思議と、都のウェブサイトには今も旧来の資金計画が載ったままだ。税金で穴埋めなどという話にならないようにウオッチせねばなるまい。

 もう1つ、豊洲のお祝いムードに水を差しかねないことを書いておく。

 室内で温度管理できる豊洲市場では、築地では要らなかった空調費がかかる。その業者負担割合を決めないまま移転が行われたと聞く。店子(たなこ)が光熱費を負担するという、世間では当たり前のことを業者に求めない。そんな東京都の行政能力には大きく疑問符が付く。

 さらに移転が長引き迷走する中で財務状態が悪化し、廃業に至った仲卸も少なくない。その辞める業者の営業権(鑑札)が業者間で売買されていた。その結果、新市場移転に際し、新規参入業者の募集すらなく、既存の一部の業者による寡占化が進んだ。その他、築地の悪弊だった通路などの占拠、駐車場の転貸などは果たして是正されるのか。

 公設市場は一体誰のものなのか。

 この根源的な問いに、今こそ小池氏は明快に答えるべきだ。答えがなければ、「小池都政こそブラックボックス」と声を大にして言わなければならない。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)など多数。