【緊迫する世界】会談は「実質2分」トランプ氏に見限られた文大統領 米は韓国の裏切り許さず…ポンペオ国務長官「いい加減にしろ」文氏を恫喝!?

トランプ氏(左から2人目)と、文氏(同3人目)は、夫人同伴で異例の首脳会談を行った=11日、(AP)

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 ホワイトハウスで11日に行われた米韓首脳会談では、実質的な会談時間はわずか2分だった。ドナルド・トランプ大統領から、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が軽くあしらわれる様子が惨めであった。米国は、韓国を見捨てるのではないか。

 トランプ氏は3月末、ロシアゲート問題で、特別検察による追及から逃れた。これで朝鮮半島をめぐるフェーズも変わった。トランプ氏は、フリーハンドで北朝鮮と対峙(たいじ)できるようになった。

 ベトナムの首都ハノイで2月、米朝首脳会談が行われたときには、トランプ氏は窮地に立たされていた。昨年11月の中間選挙で敗北したうえ、ロシアゲート問題で米議会から弾劾裁判を受ける可能性すらあったのだ。

 そうなれば、大統領再選の芽がなくなってしまう。何としても、その矛先を外に向ける必要があった。「ハノイ会談で一発逆転」という思惑もあったに違いない。

 そこに目を付けたのが韓国だった。文氏は、北朝鮮と米国との間に立ち、2回目の米朝首脳会談をセットしたのである。

 しかし、ハノイ会談は決裂に終わった。北朝鮮に「完全非核化」の意思はなかった。トランプ氏は外交的得点を挙げられず、国内から非難された。次に米朝首脳会談をやって、何ら成果が挙がらない場合、大統領選挙の足かせとなる。それなら開催しない。

 文氏がどのような誘い水をかけようと、トランプ氏には3回目の米朝首脳会談を行うメリットはない。

 しかも、国際社会が「北朝鮮の完全非核化」のために経済制裁を科しているなか、韓国が北朝鮮支援を行っていることにも、トランプ政権はいらだちを隠せない。

 韓国企業は、ロシア経由で北朝鮮産石炭を輸入(3月の国連報告)し、韓国の船舶が洋上で北朝鮮の船舶に物資を受け渡す「瀬取り」をしていた。国連安保理の制裁違反だ。さらに昨年、韓国は300トンに上る石油製品を北朝鮮に提供していた。

 トランプ氏は11日の米韓首脳会談直前、自分の代わりに、マイク・ペンス副大統領と、マイク・ポンペオ国務長官に「いい加減にしろ」と、文氏を恫喝(どうかつ)させた。

 米軍のインド太平洋司令部は3月以降、沿岸警備隊の大型警備艦「バーソルフ」を、東シナ海での「瀬取り」取り締まりに投入した。米国が本格的に「韓国の裏切り」を監視し始めたのだ。毎年春に実施していた2つの米韓合同演習の打ち切りも発表された。

 米国が、韓国を見放しつつあるのは明らかである。

 ここで、北朝鮮が北西部・東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場の復旧を完了させ、弾道ミサイルを試射するようなことがあれば、米国は韓国を考慮せずに、北朝鮮への先制攻撃を行う可能性が出てきた。もはや、「韓国の泣き」は通用しない。

 ■川上高司(かわかみ・たかし) 1955年、熊本県生まれ。拓殖大学海外事情研究所所長。大阪大学博士(国際公共政策)。フレッチャースクール外交政策研究所研究員、世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授などを経て現職。著書に『「新しい戦争」とは何か』(ミネルヴァ書房)、『トランプ後の世界秩序』(東洋経済新報社)など。