井上ひさしさん没後10年で再注目 エッセー集や新書の相次ぐ出版に各地で特別展

「遅筆堂文庫」指定管理者代表の阿部孝夫さん=山形県川西町

 小説「吉里吉里人」などで知られる作家の故・井上ひさしさん。エッセー集、新書の相次ぐ出版や各地での特別展など没後10年を迎えた今年、再び注目が高まっている。出身地・山形県川西町では15日、新型コロナウイルスの影響で当初予定から7カ月遅れの「吉里吉里忌」が開かれる。

 「まだまだ作品は生き続けている。読者は『井上さんなら今の世の中をどう評価するか』と気に掛けているのではないか」

 井上さんの蔵書など約22万点を収める「遅筆堂文庫」(川西町)の指定管理者代表、阿部孝夫さん(65)はリバイバル人気の理由をこう分析する。

 未収録だった新聞や雑誌への寄稿などをまとめたエッセー集、歴史学者の成田龍一さんらが対談形式で魅力に迫った新書…。再版なども含め、今年だけで10冊以上の関連書籍が世に出た。

 直筆資料などを展示、紹介する特別展も鎌倉文学館(神奈川県鎌倉市)や市川市文学ミュージアム(千葉県市川市)など、井上さんゆかりの関東、東北の計6館で開催。遅筆堂文庫の遠藤敦子学芸員(62)は「これだけ一斉に実施したのは初めて」と驚く。

 こうした盛り上がりの中開かれるのが、6回目の吉里吉里忌だ。東北が舞台の代表作にちなむこのイベントは、2010年4月に亡くなった井上さんの作品を語り継ごうと、15年から毎年4月に行われてきた。今年は入場者を約500人に絞り、ようやく今月15日の開催が決まった。

 当日は、井上さんと親交があった舞台演出家、鵜山仁さんや作家、五木寛之さんの講演が予定されている。

 阿部さんは「井上ひさしを後世につなぐことが使命。これからも魅力を伝えていく」と決意を新たにしている。