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「平成維新」を経験した大前研一氏が考える都民ファの行く末 (3/3ページ)

 もう一つの大きな問題は、小池知事は知事職が行政の長の仕事だという点を理解していない可能性があることだ。憲法第8章(「地方自治」)は、地方公共団体は国が定めた「法律の範囲内で条例を制定することができる」(第94条)と定めている。つまり、都議会で過半数を占めても、国会と違って何も変わらないのだ。

 しかも東京都議会は、役人が上げてきた議案を10年以上にわたって全く否決していない。極端に言えば、ビジョンと政策があったら、人事権を持つ知事は役人に成案させて予算を付けさせることができる。国会議員を24年間務めた小池知事がそれをどこまで理解しているのか、知りたいところである。

 とはいえ、小池知事が掲げた政策の中にはビジョンらしきものもある。たとえば「都道の電柱ゼロ化」である。ただし、これは電線だけでなく電話線や上下水道管、ガス管なども一緒に地下に埋設する共同溝を建設しなければ防災対策上の意味がないので、莫大なコストがかかる。

 電柱ゼロ化自体には私も賛成だが、東京都の予算だけでは無理だろうし、都道だけ単独でやってもあまり意味はない。都内の容積率を大幅に緩和してブロック単位で高層化し、新しく入ってくる住民が住宅を購入することで費用を負担してもらう。その工事と一緒に地下の共同溝も埋設するかたちで街を造り直すことが重要だ。

 これならば、外部経済=民間の資金によって賄うことができる。PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ=公民連携)の考え方である。

 その際は、共同溝の建設だけでなく、軟弱地盤の強化、非常用の電源設備や食料・水・医療品などの備蓄も含めて、都民の税金を極力使わずにやるべきだと思う。

 電柱をゼロ化するということは、「都市を造り直す」ということであり、それを東京全体でやろうと思ったら100年、都心部だけでも40~50年はかかるだろう。この壮大なプロジェクトを進めるためには、ビジョンに「エコノミクス」を加え、財源の裏付けがある具体的政策にしなければならないのである。

 そこまでの大きな構想力が小池知事にあるのかどうか。それがこれから問われることになるだろう。

 ※SAPIO2017年9月号

NEWSポストセブン
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