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【日本の元気】7万年分の「物差し」 これほど連続した年縞は世界では水月湖のみ (2/2ページ)

 炭素14は放射性物質であるため、一定の割合で少しずつ減少していく。そのため、ミイラの中の値を調べると、植物を食べてから何年が経過したかがわかる。これが炭素14による年代測定の原理だ。もっとも、その測定値は誤差がつきものだった。そこで求められていたのが、炭素14の値から正確な年代を知ることができる「物差し」だった。それが、水月湖の湖底にあったのである。

 水月湖の湖底には年々、そっとそっと堆積した泥が層を作っている。その泥の層は1年分が約0・7ミリ。あたかも年輪のような縞をなしているため、「年縞」と命名されたのである。年縞には木の葉など植物の化石が入っているので、その炭素14の値を調べれば、最上部の年縞(今年)から勘定して何本目の縞か、つまり何年前なのかの「物差し」とすることができる。水月湖ではその年縞が実に約7万年分、途切れることなく続いていた。これほど連続した年縞は世界では水月湖のみ。まさに奇跡の湖だ。

 まったく違う土地で発見されたミイラであっても、炭素14の値がわかれば水月湖の年縞という「物差し」によって、何万何千何十年前なのかがわかる。その誤差は1万年前でプラスマイナスわずか29年。日本最古の縄文土器が作られたのが1万6652年前とわかったのも、水月湖の年縞のおかげで、これまでの歴史が大きく書き換えられると言われている。この水月湖が歴史の物差しの世界標準となったのは、現・立命館大学古気候学研究センターの中川毅さんのチームによる研究成果なのである。

■山根一眞(やまね・かずま) ノンフィクション作家、獨協大学特任教授。1947年、東京生まれ。獨協大学ドイツ語学科卒。執筆分野は先端科学技術、環境、巨大災害、情報の仕事術など幅広い。近刊は『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』。理化学研究所相談役、JAXA客員、福井県文化顧問、3・11大指復興アクション代表、日本文藝家協会会員。

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