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【日本の元気】歴史の世界標準になった水月湖の年縞 年代測定における「ものさし」 (1/2ページ)

★水月湖の年縞(後編)

 福井県の三方五湖のひとつ、水月湖の湖底には、およそ7万年分の泥が堆積した縞々「年縞(ねんこう)」があり、地質学や歴史学の年代測定における世界標準の「ものさし」となった。1年分が約0・7ミリの年縞を7万年分、途切れることなく取り出したチームを率いてきた中川毅さん(立命館大学古気候学研究センター)は、「時計の世界標準はグリニッジ、歴史の世界標準は水月湖になった」と語る。

 水月湖の年縞を取り出すプロジェクトは最初1993年に行われたが、技術的な問題があり完全に連続した年縞は得られていなかった。そこで2006年に新たなボーリングに挑戦したのが、当時、英国のニューカッスル大学教授だった中川さんを中心とする日欧の科学者チームだった。予算が乏しく水月湖畔の廃屋同然の住宅(彼らは「スイゲツ・ヒルトン」と呼んでいた)を拠点に、ボーリングとサンプル整理を続けたのだ。採掘した年縞の一時保存には、漁協が冷蔵庫を提供するなど地元、若狭町の協力も大きかった。

 年縞による年代測定は、年縞に含まれる葉の化石の炭素14(放射性同位元素)が手がかりだ。そこで、掘削した年縞はヨーロッパへ送られ、葉の化石をていねいに取り出し炭素14を測定。並行して数万本の年縞を1本1本、顕微鏡を使い間違いなく勘定する作業が進められた。年縞の勘定は、1日あたり10~15センチのペースで黙々と続けたという。イギリスやドイツの科学者たちによる作業は5年を要し、全データがそろったのが11年。その正確さが炭素14の年代測定の国際機関によって認められ「世界標準」となったのである。

 立命館大学に移籍した中川さんは、福井県の依頼を受けあらためて水月湖の年縞のボーリングを行い、これも成功。その成果をもとに、福井県は今、水月湖畔に年縞の博物館に相当する展示施設(名称未定)の建設を進めている。

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