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【日本の元気】ドイツの超元気超高齢夫妻と感動の再開 自由闊達な生を謳歌「この家もあげる」 (2/2ページ)

 自宅地下室の書棚には、彼女がこれまでエルミタージュ美術館や日本など世界各国で主催してきた工芸展の分厚い記録ファイルが100冊以上あり、それぞれの思い出を語ってくれたが、彼女は座っている木製の台を指して「ここで眠るのよ」と笑顔。それは柩(ひつぎ)だった!

 さらに、レースのきれいな死装束も自慢そうに見せるのだ。視力をほとんど失い、わずかに視力が残る片眼に携帯電話のボタンを近づけては知人たちに電話をかけ、「1万キロ離れた日本からゲストが来ている」とお誘いを続けるのである。

 自宅内は工芸家らしい美しいインテリアで、彼女の作品に混じりクラシックな食器、19世紀の革表紙本などがたくさんあったが、「どれでも好きなものを持って帰っていいのよ」「この家もあげる」とまで。死の準備を万端に整えたことで、この世のしがらみを捨てることができ、かえって自由闊達(かったつ)な「生」を謳歌(おうか)できるようになったのだと思った。

 「3年後の私たちの結婚70周年には絶対に来るのよ」と念を押され、私たちは3年後の再会を疑うことなく約束し、涙なしに別れることができたのだった。

 日本では70歳を迎えると早々に「終活だ」とそわそわし始める人が増えた。それをあおる情報もあふれている。だが帰国後、私たち夫婦は年齢の話になると「あと最低でも25年はあるからね」が口癖となり、これからが新しい人生だとばかり、元気もりもり気分で過ごすようになったのだった。

 ■山根一眞(やまね・かずま) ノンフィクション作家、獨協大学特任教授。1947年、東京生まれ。獨協大学ドイツ語学科卒。執筆分野は先端科学技術、環境、巨大災害、情報の仕事術など幅広い。近刊は『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』。理化学研究所相談役、JAXA客員、福井県文化顧問、3・11大指復興アクション代表、日本文藝家協会会員。

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