【富坂聰 真・人民日報】狡猾中国を手のひらで転がす正恩氏 外交巧者ぶり発揮 対決姿勢の一方で「国家主席再選の祝電」 (1/2ページ) 富坂聰 真・人民日報
「三胖子下午到北京」
こんな情報が中国のSNSに飛び交ったのは3月26日の夜のこと。
三代目のデブを意味する「三胖子」は、中国のネットユーザーたちが好んで使う金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の隠語である。
世界を驚かせた電撃訪中によって、北朝鮮が大きく局面を動かしたのはいうまでもない。あらためて外交巧者としての北朝鮮の姿が浮き彫りにされた。
正誤、好悪を隅に置けば、いま朝鮮半島のトップはいずれも外交力に長けていると認めざるをえない。
この状況に「日米の圧力が効いた」という解説が聞かれるのはあまりに情けない。2014年にも北朝鮮幹部が電撃訪韓し、今と近似した状況が演じられた。そのときも全く同じように「いよいよ北朝鮮が追い詰められた」「微笑み戦略に騙されるな」といっていた。
その後の展開を振り返れば、答えは明らかだ。
だが今回の原稿の意味はそんなつまらないことを書こうというのではない。
焦点を当てるのは、あの狡猾な中国も上手に北朝鮮の手のひらで転がされた中朝関係の裏側だ。
全人代の期間中、中国の専門家の間では中国の対北朝鮮政策は失敗したという話でもちきりだった。というのも、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領の仕切りで米朝のトップ会談実現が現実味を帯びてくる流れの中で、中国の役割が失われていくことは誰の目にも明らかだった。
「外交部ルートからも中連部(党中央対外連絡部)ルートからも一切挨拶がない」(外交関係者)との焦りが広がっていたのである。
中国はオバマ前米大統領のころから、北朝鮮が非核化の動きを見せない限りトップ会談には応じないと冷たい態度に終始してきた。