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【有本香の以毒制毒】正恩氏は「北のシンガポール」を作れるのか? 両国を分ける決定的な違い (2/2ページ)

 ちなみに、シンガポールの庶民はHDBと呼ばれる公団住宅に住んでいるが、その広さは80平方メートルぐらいあり、公団住まいとはいっても、世帯に1人、住み込みのメイドが居る。このメイドがフィリピンやインドネシアから来ている女性の外国人労働者。家事一切を彼女らに任せて女性も外で働くのがシンガポール・スタンダードだ。

 メイドの管理も政府機関が行っていて、メイドへの給料から一定額を国が取り、定期健康診断を行い、妊娠やエイズ検査も定期的に行う。検査で妊娠やエイズが陽性となれば、理由のいかんを問わず国外退去となる。例えば、雇い主の家主によるレイプによる妊娠でも問答無用、メイドは故郷へ帰らされる。子供を産んでシンガポールに居着くことは許さない。

 この外国人労働者への冷酷な割り切りシステムは欧米のメディアなどから時折非難されるが、シンガポール政府も国民もどこ吹く風だ。

 時折、欧米人や日本人が「内政干渉」する言論の自由についても、シンガポールと北朝鮮では大きく違う。インターネットアクセスは自由だし、私たち外国メディアの取材にも国民は笑顔で応じてくれる。

 米朝会談終了後、観光客でにぎわうシンガポールの名所の1つを訪れてみると、偶然、北朝鮮の関係者と遭遇した。胸に金日成(キム・イルソン)バッジを付けた彼らに「平壌(ピョンヤン)から来たんですか?」と英語で話しかけると、小さくうなずいただけで、その後どんな質問をしても口を固く結び一切の会話を拒んだ。

 「言論の自由がない」と言っても、シンガポールと北朝鮮では天と地ほどの差がある。そんな両国をあえて比べてみるとき、国の経済力、豊かさの重要性を改めて思い知るのである。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真実 』(幻冬舎文庫)など多数。

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