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【勝負師たちの系譜】棋士が初めて奪取したタイトル、圧倒的に多いのは? (1/2ページ)

★ヒューリック杯棋聖戦(3)

 棋士が初めて奪取したタイトルは、棋聖戦が圧倒的に多い。現在は第89期が進行中だが、65期までは年に2回、タイトル戦が行われていたことも、起因していると思う。

 ざっと挙げても、古くは第10期の山田道美九段に始まり、中原誠永世棋聖、内藤国雄九段、有吉道夫九段、米長邦雄永世棋聖など、11人が該当する。

 私が奨励会に入った1960年代は、若手の目標が打倒大山康晴永世棋聖だった。ただし山田の場合は露骨にそれを公言したから、大山との対局はかなり殺気立っていた。

 夜戦に入り、山田が前かがみになって盤上に影がかかると、大山が「暗くしなさんな」と注意した話は有名だ。

 山田が大山から念願の初タイトルを奪ったのは、67年のこと。しかしその翌期にはもう、『若き太陽』と呼ばれた中原が挑戦してきて、山田はいきなり2連敗でカド番に追い込まれた。

 当時はタイトル保持者が、1勝もできずに敗退することはまずない時代だった。真面目な山田は、このままタイトルを奪われたら、対局料返上どころか、自身の進退まで考えたらしい。

 しかし開き直って指した第3局に勝つと、そのまま後を連勝して、防衛に成功したのだった。

 この敗戦をきっかけにして成長した中原は、翌年初タイトルを山田から奪取し、王者への道を進むのである。反対に山田はこの2年後、36歳の若さで急逝したのだった。

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