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【編集局から】「やっとオウムが東京に来た」 手ぐすね引いて待っていた警視庁“最強集団”

 「やっとオウム(真理教)が東京に来たよ」。警視庁の知り合いがこう耳打ちしてくれたのは、1995年3月上旬のことだった。1月に起きた阪神淡路大震災で、日本は大混乱に陥っていた。

 2月28日、東京・目黒公証役場事務長が拉致された。教団の関与が疑われる事件が続発していたが、警察当局は宗教団体という壁にも阻まれ、決定打を欠いていた。

 松本サリン事件後、警視庁鑑識課は東京で同様の事件が起きることを想定し、対処法を準備していた。捜査1課は最強の捜査能力を持つ自負から「早く東京に来い」と手ぐすねを引いていた。そして、教団はついに虎の尾を踏んだ。

 警視庁と教団の戦争だったような気がする。実質的に捜査を指揮する捜査1課長の車は、マークIIから防弾仕様のセンチュリーに替わった。本部庁舎は有事には巨大な防護壁が作動し、堅牢な要塞になることを知った。5月16日に麻原彰晃元死刑囚が逮捕されると、記者で膨れあがる会見場に姿を現したのは、前例のない警視総監だった。

 「首魁(しゅかい)を逮捕しました」。「謀反(むほん)の首謀者」という意味だ。容疑者の呼称として初めて耳にする言葉に、底知れぬ恐怖感を覚えた。あれから23年がたち、すべての死刑囚の刑が執行された。(光)