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【高橋洋一 日本の解き方】トルコリラ暴落の政治的背景 トランプ大統領流の揺さぶり…過小評価できない世界経済への打撃 (2/2ページ)

 この乖離はここ数カ月ではさらに大きくなっている。一時、1ドル=7リラ程度となっており、これは理論値の2倍以上のリラ安である。理論値とかけ離れている理由は政治的なものであろう。

 まず、インフレ率が目標以上に高いにもかかわらず金融引き締めを行わないことが主因であるが、それを中央銀行ではなく、エルドアン大統領が指導している。しかも、これは、中銀が「手段」の独立性を持つという先進国のスタイルとは異なり、この意味で政治的な問題だ。

 もっとも、この政治スタイルは今に始まったことではないので、これだけであれば、理論通りにリラ安になるだけだろう。しかし、今や米国とトルコは政治的な対立をしており、それがリラ安に拍車をかけている。

 トルコは、2年前のクーデター事件に関係したとする米国人牧師を拘束している。それに対して、米国はトルコ閣僚の資産凍結を決めた。さらに、リラ安に伴い、トルコから輸入する鉄鋼などの関税を引き上げることも表明した。

 米国の対トルコ投資・与信はそれほど多くない。欧州の対トルコのほうがはるかに大きいので、米国はリラ安の影響を受けにくく、トルコ問題は欧州への打撃が大きいのが実情だ。この意味では、新興国とはいえ世界経済への影響を過小に評価することはできないだろう。

 トルコは北大西洋条約機構(NATO)国でもあり、米軍はトルコ国内のインジルリク空軍基地を使用している。安全保障体制そのものではなく米国人牧師の解放というトランプ流の政治的な揺さぶりであるが、仕掛けられたトルコは思わぬ苦境になっている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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